大部屋を導入する際は、組織のどこからどういう順番で導入するかということが非常に重要です。加えて、大部屋の導入による成果目標をはっきり決めておかないと、単なる「見える化」で終わってしまい、会社の業績向上につなげたり、ビジネス上の問題を解決したりすることはできません。

 図1に、大部屋の階層構造に基づいた導入の順番を[1]~[5]で示しました。前回説明したように、大部屋の理想形は3階層ですが、最初に大部屋に取り組むのは、組織における重要度が高く、かつメンバーに対して大きな負荷がかかることが予想されるプロジェクト(図1の[1])が適切です。並行して、プロジェクトに直接レポートを上げる現場の中で特に負荷が大きいチーム(図1では[2]のチームA)でも大部屋活動を始めます。

図1●導入の順番
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 この場合、チームAは、プロジェクトの大部屋で行われるミーティングに参加する前にチーム内で短いミーティングを開き、共有すべき課題(2つ以下に限定)を決めます。その上で、チームAのリーダーだけがプロジェクトの大部屋ミーティングに参加します。

 このような活動を3カ月ほど続けると、大部屋の使い方がスムーズになり、プロジェクトより1段上となる副社長レベルの大部屋(図1の[3])の必要性が自然と認識されるようになります。なぜなら、結局はトップの方針が決まらないと、プロジェクトが進行しないからです。

 さらに、当初はチームAのリーダーだけがプロジェクトのミーティングに参加しますが、3カ月を過ぎたあたりで他のチーム(図1では[4]のチームBや[5]のチームC)も大部屋をベースにしたプロジェクトの進め方に巻き込まれてくるのが通常です。そうすると、他のチームも特に言われなくても自分たちの大部屋が欲しくなってきます。筆者はこれまでいろいろな企業で大部屋の導入を支援してきましたが、以上のような順番で導入するのが最もスムーズで、かつメンバーからの反発も少ないことが分かりました。