Every Little Thingとソフトバンクのおかげで、国内にすっかり定着した移動通信方式LTE(Long Term Evolution)。その次には、LTE-Advancedが控えている。大きな声では言いにくいが、普段、半導体の分野で記事を書いている筆者は、「LTEとLTE-Advancedの違いは?」と聞かれると、自信を持っては答えられない。そこで、隣の日経エレクトロニクス編集部にいる、移動通信方式に明るい数人に、いまさら聞きにくい(=いまこそ聞きたい)質問をした。以下に、先輩と後輩のやりとりという形で記事にまとめた。

後輩 昨日、スマートフォンをLTE対応機種に買い替えたんですが、速いっす。LTEへの切り替えのタイムラグは気になるけど、一度LTEになれば快適。次はLTE-Advancedってのになるんですよね。もっと快適になったら、また買い替えが必要なのかな。早くAdvancedになって欲しいような、そうでないような・・・。ところで先輩、LTE-Advancedって、LTEとどう違うんですか?

先輩 LTE-Advancedでは複数の技術を取り入れて、100MHzの利用周波数帯域を確保し、下りで最大1Gビット/秒のデータ伝送速度を実現する。一方、LTEでは、利用周波数帯域は20MHzで、規格上は最大300Mビット/秒(カテゴリー5)のデータ伝送速度を実現できるけど、実際には最大150Mビット/秒(カテゴリー4)と言われている。

後輩 なるほど、使える帯域が広がって、高速になるわけですね。で、それを可能にする複数の技術って何ですか。

LTE\-Advancedの主要実現技術 出典:『LTEのすべて 基本原理から実装技術,そして国別周波数割り当てまで』、日経BP社
LTE-Advancedの主要実現技術
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先輩 主なものは5つ。複数の周波数帯を統合して利用するバンド・アグリゲーション、複数基地局を使って共同送信するCoMP(coordinated multiple point)、利用するアンテナ数を増やすMIMO(multiple input multiple output)の拡張、上りの周波数利用の制約を緩和するSC-FDMA(single carrier-frequency-division multiple access)、子基地局も利用するインテリジェント・リレー。ざっと言えば、使える周波数帯域や設備を積極的に利用して、LTEの速度の向上を図ったのが、LTE-Advancedってこと。

キャリア・アグリゲーション 出典:『LTEのすべて 基本原理から実装技術,そして国別周波数割り当てまで』、日経BP社
キャリア・アグリゲーション
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後輩 どれが最も重要な技術なんですか。

先輩 甲乙付け難いけど、僕はバンド・アグリゲーションだと思うよ。連続して100MHzを確保できないキャリア(通信事業者)は少なくない。飛びとびの周波数帯でも、合計で100MHzを確保できるバンド・アグリゲーションの技術は重要だと言える。

後輩 LTE-Advancedのサービスはいつごろ始まるんですか。

先輩 国や地域によって違うと思うけど、早いところでは2013年中に開始すると言われている。

後輩 LTEは4G(第4世代の移動通信方式)と言われてますよね。LTE-Advancedは4.xとか、5Gと呼ばれるんですか。

先輩 人によって見解は異なるだろうけど、僕は、LTE-Advancedは引き続き4Gと呼ばれると思う。それと、5Gはもっと先に登場する新しい方式だよ。LTE-Advancedで下りの伝送速度は最大1Gビット/秒だけど、5Gではそれを10Gビット/秒に引き上げるようだ。5Gの技術開発は研究機関で始まったような段階だけど、例えば、MIMOの多重度(アンテナ数)を上げるのは1つの方法だよね。LTEでは、上りはMIMOなし、下りは最大4×4のMIMOだった。それがLTE-Advancedでは、上りは最大4×4のMIMOで、下りは最大8×8になった。5Gではもっとアンテナ数を増やすことになるだろうね。

後輩 5Gはいつごろ実用化されるんですか。

先輩 難しい質問だね。当初、移動通信方式は10年ごとに世代が進む計画で、その時は、3Gは2000年、4Gは2010年、5Gは2020年に実用化と言われていた。4GのLTEのサービスが始まったのが最近だから、4Gは3~5年遅れている。それを元に推測すると、2020年~2025年のどこかで始まると思うよ。

後輩 昨日買ったスマホの何世代も先ってことですね。