4K映像は、3D映像と同じ道をたどるか

 高精細な4K映像や8K映像は、現行放送で用いているHD映像に比べてデータ容量が大きい。これを地上デジタル放送で届けるための帯域を確保するには、現在の枠組みを大きく変更しなければならないとの見方が強い。これに対してCATVや衛星放送では、通信網の効率的な利用や、新しい衛星の活用など新技術で放送帯域を確保しやすい条件がそろっている。

 例えば、スカパーJSATでは現在、動画圧縮技術「MPEG-2」で符号化している映像サービスを、2014年5月をめどに次の世代の圧縮技術「H.264/MPEG-4 AVC」に移行する計画だ。より圧縮効率の高い動画圧縮技術の採用で衛星放送の伝送帯域には余裕が出る。これを4K放送などに利用できるとみている。NHKとNNSによる伝送実験では、分割した8K映像をCATVの複数の空きチャネルを用いて伝送し、受信機側で合成する技術を採用した。この技術を使えば、現行のCATV施設の構成を大きく変更することなく8K映像を伝送できるという。

 2013年1月には、H.264の次を担う動画圧縮の国際標準方式「H.265(HEVC)」の技術も固まった。H.264の2倍の圧縮率を実現したこの技術を用いれば、現在の実験成果による伝送効率の向上をさらに前進できることは間違いなさそうだ。(関連記事「次世代動画圧縮『HEVC』」)

 CATVや衛星放送では、外付けのセットトップ・ボックス(STB)で新技術を導入しやすい利点もある。もちろん、表示装置に用いる4Kテレビへの買い替えを促す必要がある点は、地上放送と同じだ。ただ、4K放送に対応していない現在の4Kテレビでも、外付けの装置を追加することで4K放送の映像を表示できるようになる。今後安価になっていくであろう4Kテレビと外付け装置の組み合わせであれば、4K映像の視聴環境を整えやすい。

 もちろん、家庭向けに4K映像を届けるには、受信装置の開発・製造に加え、4K映像対応の業務用放送機器を導入する先行投資がかさむ。このため、サービス事業者が超高精細映像のサービス提供に踏み切るハードルは高い。しかも、「HDが単に高精細になっただけでは、うまくいかない」という声は少なくない。よく引き合いに出される技術は、3次元(3D)映像だ。

 多くのメーカーが3Dテレビを鳴り物入りで製品化したものの、専用メガネをかける煩わしさや、3D対応の映像コンテンツがあまり登場しなかったことなどを背景に、今のところ取り組みが成功したとは言えない状況だ。映画館での3D上映は増えたものの、家庭向けの映像サービスでは3D映像に注力する取り組みは拡大していない。4K映像も同じ轍を踏むのではないかというわけである。

 ただ、4K映像の視聴環境には、3D映像とは異なる二つのユーザー体験があると指摘する声もある。