キーワードは「ブラジル」

 日本国内だけではなく、海外でも取り組みが本格化している。ソニーは2013年1月に、同年夏に米国で4K映像の配信サービスを始めることを明らかにした。韓国では、同国の公共放送局KBSやLG Electronics社が4K映像を地上デジタル放送で流す実験に着手している。韓国Samsung Electronics社や、米VOD(ビデオ・オンデマンド)大手のNetflix社なども4K映像の配信実験を進めている段階だ。テレビに加えて、スマートフォンやタブレット端末といった携帯端末でも4K映像の再生機能を付加する動きがある。(関連記事「押し寄せる4Kブーム、スマホやカメラにも波及」、「日経エレクトロニクスDigital」読者限定)

写真左は、Samsung社がNetflix社と共同で進めている4K映像の配信実験のデモ。右は、LG社がKBSと共同で手掛ける4K映像による地上デジタル放送実験のデモ。いずれも「2013 International CES」に出展した。
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 映像サービス事業者や家電メーカーが期待を寄せる大きなキーワードの一つは「ブラジル」である。2014年6~7月に開催されるサッカーのワールドカップ(W杯)ブラジル大会、2016年8月のリオデジャネイロ五輪を目指して次世代の超高精細映像サービスを商用化する。特に日本では、これを掛け声にしたサービス導入計画の検討が進んでいる。

 総務省は、2012年11月に有識者や関連企業の関係者で構成する「放送サービスの高度化に関する検討会」を立ち上げた。この検討会で設けた超高精細映像に関する分科会で配布した資料では、サービスを立ち上げるために人的・資金的なリソースを集約した「オールジャパン」の推進体制が必要とうたっている。

 既に4K映像を表示する機能を備えた大画面テレビやプロジェクターでは、テレビ・メーカー各社の製品投入が本格化し始めた。撮影用の4Kカメラも、多くのカメラ・メーカーによる製品化や開発が進みつつある。映画業界では、4K映像で撮影し、上映する取り組みが広がっている。(関連記事「4Kだらけのテレビ、盛り上がりの陰で深まる悩み」)

 撮影装置や表示装置に加えて、放送や通信で4K映像を家庭に届けるインフラが整えば、ブラジルで開催される二つのスポーツ・イベントや、東京都が立候補している2020年の五輪などを多くの視聴者が超高精細映像で楽しむ環境は現実味を増す。高精細化による新しいサービスで、映像サービスの付加価値を高め、サービスの加入や薄型テレビの需要喚起につなげたいというわけだ。

 4K映像関連でCATVや衛星放送、通信関連の事業者による取り組みが活発な背景には、地上デジタル放送に比べて超高精細映像の新サービスを追加しやすいことがある。