4Kテレビの本質は、映像だけではない
一つは、4K映像を表示する大画面テレビが実際に登場したことで初めて分かってきた映像の見え方の変化だ。数年前まで4K映像は100型を超えるような大画面でこそ威力を発揮すると言われていた。それよりも小さな画面では、臨場感や迫力を表現しにくいと思われてきたからだ。
この1~2年ほどで50~60型の4Kテレビの製品化が相次ぎ、実際に4Kテレビで表示した4K映像を視聴する体験をした業界関係者が増えた。これが、この“常識”を変えつつある。家庭に置く無理のない画面サイズでも「精細度の高さによる立体感」や、「写真を見ているような実物感」を感じられるとの感想が出ているのだ。従来の常識とは異なる体験であるため、テレビや映像関連の技術者の間では「この見え方の変化は、科学的な検証が必要」という意見も上がっている。
3D映像と異なるもう一つのユーザー体験は、4K解像度では視聴者に提供できる画面上のワークスペースが拡大することである。文字情報やGUI(グラフィカル・ユーザー・インタフェース)を表示した際の精細感が向上すると同時に、現行のHD映像を画面上に配置する自由度が高まる。これがスマートテレビのような新しいサービスで付加価値を生むというわけだ。
4K映像で確実に言えるのは、これまでの常道だったスポーツ・イベントに期待する技術開発だけでは、薄型テレビの価格下落や、若年層を中心にした視聴者のテレビ離れに歯止めをかける強力な武器にはなりにくいということだろう。うわさが先行するApple社のテレビも、4Kだけが売りではないとの論調が多いようだ。4K映像とその解像度によるユーザー体験を生かす新発想の映像サービスを創出する。この一歩先を行く取り組みが、映像サービス事業者や家電メーカーに求められている。