「ごめん、今日も会社に行ってくるよ」
「しょうがないでしょ、仕事がたまっているんだから。そんな恨めしいこと言わないでよ…。休日の朝から家族を置いていくのは俺だってつらいんだから。いやー、ほんとにやばいよ。特集でしょ、インタビューでしょ、寄稿の編集もあるし。それに別冊もあるなぁ」

「今、記事を書いているのは4月1日号。だから3月中旬が特に忙しい。別冊もほぼ同じ締め切りだし」
「どんな内容かだって?珍しいね、仕事に興味持つなんて。まさか浮気を疑っているの?そんわけないじゃん。モテる要素ゼロでしょ。やけ食いで体型も横に広がってきているし」
「どこまで伝わるか分からないけど、いちおう教えるよ。まず特集はヘッドマウント・ディスプレイ(HMD) 」
「そうそう、頭に身に着けるやつだよ。ドラゴンボールの『スカウター』みたいな。実際はいろんな種類があるんだけど」
「確かに今まで身に付けている人はほとんどいなかったよ。でもこれからは普及するかもしれない。軽くて小さくて格好よくなっているからね。『Google Glass』というのがあって、それが代表例だね。日常生活で着けて、道案内を見ながら移動したり、音声メッセージを送れたりするんだよ。それにカメラを搭載していて、自分が見ているような視点の写真やビデオを撮影できる。その撮ったデータを友達と共有できたりするんだよ。楽しそうでしょ」
「うーん、反応が鈍いなぁ。僕みたいな30代の男性の多くは、スカウターってだけで萌えるだけどなぁ」

「HMDの取材もおもしろいんだけど、インタビューがまたおもしろいのよ。ユビキタスエンターテインメント(UEI)が開発している『enchantMOON(エンチャントムーン)』っていう新しいタブレット端末の話を、UEIの社長に聞きに言ったわけさ。いやー、実に楽しいひと時だったなぁ。清水さんって人なんだけど、話し出すと止まらない。その『マシンガントーク』がおもしろくて。話を聞いていて、何度か大爆笑しちゃったよ。だから2時間弱があっという間に過ぎたなぁ」
「いやいや、あくまで真剣ですよ、仕事だし。遊びに行っているわけじゃないよ」

「タブレット端末が気になるの?iPadすらあまり関心がないのに?」
「じょっ、冗談だよ。ごめん、ごめん、iPadは使っていたね。ときおりだけど。で、そのタブレット端末だけど、かいつまんで言うと、手書きに特化したタブレット端末で、電磁誘導方式のタッチ・ペンでさらさらと文字や絵を書けるのが最大の特徴だね。試作品を触らせてもらったけど、とにかく書き味は抜群だよ。メモを頻繁に取る記者にとってぴったりな機器だね。あと、外観も特徴的で、大きなハンドルが付いているの。立ったまま安定して書けるように。その場でほしくなって値段を聞いたんだけど、まだ具体的な販売価格や発売時期は決まっていなくてさ。逆に『いくらなら買いますか?』って聞かれちゃって」
「いやいや、おもちゃじゃないって。れっきとした仕事道具ですよ、仕事道具。それにおこずかいを貯めて買うならいいでしょ。自分が関心ないものに対しては厳しいなぁ…」

「ああ、寄稿ってのは、外部の人に原稿を書いてもらって我々が編集するの。テーマは二つあって、『パワー半導体』と『HDDとSSDの使いこなし』。いずれも連載ものだよ。ただ、今回は忙しいから、HDDとSSDの使いこなしの方は、同僚の人にお願いしました。ちなみに、著者の方は、4月にセミナーに登壇してもらう予定なんだ」

「それから別冊というのは、あるテーマに絞り、日経エレクトロニクスとは別に出版する書籍のことだよ。以前はパワー半導体の別冊を作ったけど、今回はユーザー体験(UX)やユーザー・インタフェース(UI)をテーマにした別冊を編集中なの」
「うーん、やっぱりピンときてないね。まあ、平たく言えば、内容の中心は、電子機器を操作するための最新技術。声で操作する音声入力や視線で操作する視線入力、手や体の動きで操作するジェスチャー入力なんかだね。それからBMIってのもあるよ」
「違う違う、体格指数じゃないよ。BMIはbrain machine interfaceの略。脳波で操作する技術だよ。僕のおなか見て言わないでよ。」
「そういえばおなかが空いたなぁ。あっ、もうお昼じゃん!じゃあ、ご飯食べてから行くよ。やきそばを作るけど、それでいい?」

このお話は事実を基にしたフィクションです。日経エレクトロニクスの4月1日号と最新別冊の詳細はこちらです(日経エレクトロニクス紹介ページ別冊の紹介ページ)。