2012年12月10日。経営危機にあるルネサス エレクトロニクスを、官民が一体となって支援することが正式に発表された。産業革新機構と、トヨタ自動車や日産自動車をはじめとする顧客企業8社を割当先とする第三者割当増資により、ルネサスが1500億円を調達するというのがそのスキームだ。ルネサスはこの資金を、コアコンピタンスの強化などに振り向ける。そのコアコンピタンスとは言うまでもなく、約30%と世界トップの市場シェアを握るマイコン事業である。今後は、アナログ&パワー半導体、ソフトウエアや開発キットを組み合わせたソリューション事業の強化によって経営再建を図るという

 ルネサスの生命線であるマイコン事業を、母体企業の一つである日立製作所で育てた経験を持つのが、牧本次生氏(半導体産業人協会 代表理事)である。日立で長く半導体事業を率い、現ルネサス エレクトロニクス社長の赤尾泰氏をはじめとする後進を育てるとともに、後にソニーへの電撃移籍を果たした“ミスター半導体”の異名を取る人物である。ルネサスが再出発しようとする今、同社のマイコン事業のルーツとなった日立のマイコン事業の歩みを、牧本氏が振り返る。