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米Apple社の株価と平均株価を2012年3月22日から週の終値で示した
米Apple社の株価と平均株価を2012年3月22日から週の終値で示した
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「Apple神話の崩壊」という言葉をよく耳にする。米Apple社の株価に着目して、こう表現されることが多いようだ。株価回復を狙う同社は今後どのように動き、エレクトロニクス業界にどんな影響を与えるのか。さらに同社の存在感が薄れると、技術開発はどう変わるのか。

 米Apple社の直近の株価は、2012年9月のピークから3~4割下がっている。この半年間に堅調な推移を見せる米国平均(ダウ平均)株価とは対照的だ。まずは、その理由について、エレクトロニクス業界の株式市場をウォッチしているドイツ証券の中根康夫氏(株式調査部 シニアアナリスト マネージング ディレクター)に尋ねた(同氏のコラム「台湾・中国 中根レポート」、関連記事「「iPhone 5」パネル供給不安、部品市場への影響を聞く」)。

 「株価が下がっているのは、今後1~2年先の収益拡大への期待がはげ落ちたからだと言える」。ただし、“Apple神話が崩壊した”といっても「同社が現時点で弱くなっているわけでも急に実力が衰えたわけでもない。依然として利益の絶対水準は高い」。大前提として、同社が苦境にあえぐような状況に陥ったわけではないのである。株価を左右しているのは「はげ落ちた期待」だ。すなわち、「iPod」「iPhone」「iPad」と立て続けにヒット商品を世に送り出してきた同社の次の大型製品が見えない点である。

 同社は、次期大型製品として家庭用の新製品を開発していると、明かしている。しかし「iTV」と噂される新製品は「私の理解では、量産が間近に迫っているような状況ではない。というのも、その製品と思われる製品や部品のサンプル生産が行われている形跡があまり見られないためだ」。Apple社製品のサプライチェーンにネットワークを張り巡らしている中根氏の耳に入っていないことから、新製品がまだ出荷を控えた段階にはない可能性が高い。

 しかも既存製品で売上高や利益を伸ばすことが難しくなっているという。iPhoneについていえば「スマートフォンの普及が進み、コモディティ化が始まっている」(中根氏)。「同社製品を取り扱う通信事業者の数を増やすことで出荷を伸ばすことも難しくなっている。というのも、iPhoneを取り扱っていない大手はNTTドコモと中国China Mobile社くらい。今後、取扱い事業者の拡大に期待することは難しい」。