ディスカッションする研修生達。
ディスカッションする研修生達。
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議論した内容をグループごとに発表。
議論した内容をグループごとに発表。
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指導に当たる司馬氏。
指導に当たる司馬氏。
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堤工場の見学後(堤工場は撮影禁止でした)に「トヨタテクノミュージアム 産業技術記念館」を訪れた研修生ら。
堤工場の見学後(堤工場は撮影禁止でした)に「トヨタテクノミュージアム 産業技術記念館」を訪れた研修生ら。
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 私は、50人余りの研修生を前に「日本流ものづくり- 強さを支える情報の流れと連携 」といったテーマで、日経ものづくりの記事などを基に、擦り合わせや大部屋連携といった日本の製品開発について話をしたのですが(通訳付き)、その後もやはりその内容についてのディスカッションです。「インドにおいて設計上流での擦り合わせによるものづくりを実現するに当たって問題となるのは何か」といったテーマでの議論と分析が夜遅くまで続けられました。

 普段は温厚な司馬氏は、指導に当たる際は結構厳しくて、研修生がちょっと的外れな質問をしたりすると「テーマと関係ないだろ!」と一喝するのですが、彼らはそんな厳しい指導にもめげることなく、常に真剣な面持ちで取り組んでいました。皆社会人といえど世間擦れした感じは全くせず、まるで学生か新入社員のようなひたむきさが感じられました。

 翌々日に同行したトヨタの工場見学でもその印象は変わりませんでした。むしろ、ますます強いものとなりました。同社堤工場の溶接工場とアセンブリ工場を見学したのですが、ガイドの女性の説明に熱心にメモを取っています。「欠陥が見つかったらどうするのか」、「作業者の数は?」、「タクトタイムはどれくらいか」など、さまざまな質問が出ていました。特に、多数の溶接ロボットが自動溶接する様は目を引いたようで、若い研修生の1人は「こんなに多くのロボットが協調して動くのを初めて見た。非常に興味深い。欠陥がほとんどないのも驚きだ」と目を輝かせていました。

 研修生、特にBコースの若手エンジニア達は、インド製造業をけん引すべく将来を嘱望されたエリート達です。司馬氏によると、その多くが自費で参加しているとのこと。経済的にもそこそこ恵まれているのでしょうが、決して安くない参加費用を払ってまで日本の製造業を学ぼうというだけに皆とても熱心なのです。

 実はこうした研修プログラムに対しては、「敵に塩を送るのか」といった批判もあるそうです。しかし、司馬氏はインドの製造業がさらに発展した時、彼らが日本のビジネスとの架け橋となってくれるだろうと期待しています。きっと、彼らが帰国して力を発揮すれば、インドのものづくりはますます実力を高め、日本との差も縮まっていくのでしょう。願わくば、何年後か十何年年後かにそうなったときでも、日本の製造業が依然として彼らの手本となるようなものであって欲しいものです。