ディスカッションする研修生達。
ディスカッションする研修生達。
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議論した内容をグループごとに発表。
議論した内容をグループごとに発表。
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指導に当たる司馬氏。
指導に当たる司馬氏。
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堤工場の見学後(堤工場は撮影禁止でした)に「トヨタテクノミュージアム 産業技術記念館」を訪れた研修生ら。
堤工場の見学後(堤工場は撮影禁止でした)に「トヨタテクノミュージアム 産業技術記念館」を訪れた研修生ら。
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 2013年2月、インドの優秀な人材に日本のものづくりの神髄を伝えようという国際協力機構(JICA)の研修プログラム「VLFM(Visionary Leader For Manufacturing)」にお邪魔する機会がありました。そこで目にしたのは、生まじめで熱心に研修に取り組む若手エンジニア達の姿でした。研修の一環の工場見学に同行した際、研修生の1人が、「今までの人生で最も印象的な経験だった。今後の自分の人生にきっと役立つに違いない」と満足げに語っていたのが印象的でした。

 同プログラムは、日本とインドが共同で実施する国家プロジェクトの1つとして2007年から実施されています。インドの製造業の発展の一助となるよう、同国で製造業に携わるエンジニアや経営幹部らに日本のものづくりの実態や特徴を学んでもらうのが狙いです。プログラムの内容は、筑波大学名誉教授の司馬正次氏がアドバイザーとなって作り上げました。同氏が直接インドおよび日本での指導に当たっています。

 全部で4つのコースがありますが、そのうち経営幹部が対象のAコースと20~30代の若手エンジニアが中心のBコースには、インド国内での研修だけでなく、実際に日本でものづくりを見学するという研修が組み込まれています。1週間~10日ほどの滞日中に工場を視察したり、日本の文化・社会に触れたりしながら、日本のものづくりの実態や日本社会との関連を学ぶのです。実は、私は今回縁があって、日本での研修の一環として日本のものづくりについてお話するとともに、工場見学の一部に同行させていただきました。

 私がJICAの研修センターに向かったのは、2月下旬のある日の夕方。その日、研修センターの一室に入っていくと、研修生らが順番に何かを発表していました。実はその前日、三井化学の工場および研究所の見学がありました。そこで見聞きしたことに基づいて、数人のグループに分かれて各グループごとに見学で印象に残ったことなどを書き出し、それを議論・分析した結果を発表していたのです。そう、VLFMの研修は、単に工場などを見学するだけではありません。見学後は必ず「学ぶべき最も印象深かったことは何か」といったテーマに沿って、グループディスカッションを繰り広げます。それもただ意見を出し合うだけではありません。出てきた意見をシステムダイナミクス手法に則って構造化して分析するのです。司馬氏によると、論理的な思考に長けた彼らには、情緒的・感覚的に説明するよりも、自ら論理的に分析することで、日本の特徴やインドとの違いをより的確に把握できるのだそうです。