クラウドで導入を容易に
以上は機能を拡張していく方向の動きだが、第4の動向として、導入を容易にしていくことが挙げられる。
「Aras Inovator」(米Aras社)はオープンソースのPLMツールとして知られる。PLMの導入は大変な労力と費用を伴うが、Aras Innovatorはライセンス費用がかからない上、ソフト自体にも導入が容易になる工夫がある。
その1つが、PLMシステムの構築や変更が容易なこと。業務に沿ったデータモデルの記述をXML(Extensible Markup Language)で与えると、それに沿った処理をプログラミングなしでWebサービスとして実現できる。この仕組みをAras社は「データモデルSOA(Servi ceOriented Architecture)」と呼ぶ*3。
クラウド・コンピューティングへの対応で導入の負荷を減らす試みも進んでいる。NECは主として中小・中堅規模の企業向けに、「ObbligatoIII」の機能をクラウドで利用可能にするサービス「Obbligato for SaaS」を提供している。複数の企業が同じ機能を利用するため、個別企業に合わせた細かいカスタマイズには向かないが、NECが用意する標準的な業務シナリオに沿って利用するのであれば、導入費用も管理の手間も軽減できる*4。
細かくカスタマイズできないといっても、部品や図面を管理するための項目名(属性)や承認ステータスの数や名称、アクセス権といった基本項目はパラメータで設定できる。さらに、業務シナリオはNECがパッケージ版Obbligatoを提供してきた実績をベースに、多くの企業で適用できるよう作成したもの。複数部品の一括採番、パーツリストなどの外部入出力、一括承認といったサービスを用意している。
電通国際情報サービスも、PLMツールの機能をクラウドサービスとして利用可能にする「PLEXUS」を提供している。PLEXUSのベースはe-OpenPDM(コア)である。
日本では未発表だが、「Autodesk PLM 360」でも多くの機能をクラウドサービスで提供する。同サービスがユニークなのは、データ管理機能はクラウドではなくユーザーの手元に置き、「データ管理以外の機能」(米Autodesk社)をクラウドサービスで提供する点だ。
データ管理機能をクラウドに置かないのは、CADは密接に連携させるため。現状ではCADはまだクラウドではなく手元で動かす場合が多い。「CADをクラウドで動かす時代が来たら、データ管理機能もクラウドに移行させる」(同社)という。