“入り交じり”によるイノベーション

 イノベーションは風土や環境とも密に関係している。慣習や常識のワナで、新たなカタチを作るのは簡単ではない。新天地でのチャレンジで、思い付かないアイデアや普段考えられない発想が生まれているのだろう。

 日本のラーメンの「味」と中国ならではの「場」が入り交じることで、ラーメンのイノベーションが起きた。地理的には中国発のラーメン・イノベーションと言えるが、味千ラーメンの中国での成功の陰には、日本側と中国側のパートナーによる共同作業があったはずだ。元々、日本のラーメンは、中国から入ってきた中国式のラーメンを日本式にアレンジして生まれた。国境を越えて、異国文化が入り交じる。それにより、新たなラーメンが生み出されてきたのだ。

 熊本の味千ラーメンは、日本の地方の多くの企業と違って、東京進出に目線を置くのではなく、最初から海外を狙っている。グローバル化されている現在、東京を制し、そして日本全土を制してから海外へ進出するというパターンではなく、初めから海外を見据え、未開拓の新天地を狙った方が、むしろ成功の可能性が高いかもしれない。

 味千ラーメンは、中国の市場に合わせて、変えるべきところは変えた。一方で、日本企業の強みの本質をしっかりと把握し、守るべきところは守った。このような形のローカライズを行って中国で成功していることは、日本の他産業においても参考になるのではないだろうか。