設計変更を把握する

 コンカレント・エンジニアリングを推進すればするほど、設計作業と製造サイドの準備作業は並行して進むようになる。もし、何らかの事情によって設計に修正が発生した場合、どこがどのように変更されたかを製造サイドも正確に把握し、適切な対策を施さなければならない。多くの企業では、出図後であれば設計変更通知書が作成され、関連部署に適宜通知される仕組みがあるだろう。しかしそれでも、多忙な現場では、変更箇所の記載漏れが起こったり、変更箇所が正しく認識されなかったりすることもある。図面を重ね合わせて、差分を探し出すという原始的な方法をとっている現場もあるが、複雑な製品では変更箇所の見落としも起こる。

 こうした場合、金型を製作し直すなどのコストと時間の膨大な無駄が発生することもあるし、最悪の場合には市場からのクレームになることもある。そこで、3Dモデルを使ってこれを根本的に解決するのが、形状差分をビジュアルに把握する機能である。図10のように設計変更前後の2つのXVLがあれば、それを比較することで、共通部分、新たに加わった部分、削除された部分を色分けして表示できる。断面で内部の差分も確認できるので、後工程でも設計変更を漏れなく把握し、適切に対処できるのである。

図10●設計変更後の形状差分をビジュアルに把握する
図10●設計変更後の形状差分をビジュアルに把握する
(XVL Studio Proの差分検出オプション)
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 さらに、差分の存在する箇所を網羅的にリストアップする機能もある。図11のようにリスト中のある箇所を選択すれば、それに対応する部位の形状の差分を、距離に応じたカラーマップで表示できるのだ。この機能を利用すれば、形状に差のある箇所をシステムが自動的に計算しリスト化してくれる。このリストも差分のカラーマップ表示イメージ付きのExcelデータとしてレポート出力できる。このレポートを利用して設計部署に変更の意図を確認したり、必要があれば金型モデルを修正したりといった対応を行うのだ。設計差分がもれなくリストアップできるので、設計部門の管理者や後工程での担当者が設計変更の全容を理解する際に、有用な武器になるだろう。

図11●差分検出結果のリスト表示機能
図11●差分検出結果のリスト表示機能
(XVL Studio Proの差分検出オプション)
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 以上、DRの活用により企業がどのように開発プロセスを革新していったか、今回はまず新潟原動機の例を中心に、XVL Studio Proの機能と活用方法について述べた。次回は、トヨタ自動車、ニコンのXVL活用について紹介していく。