DMUツール「XVL Studio Pro」で目指したもの

 図3にXVLを利用した設計DRの典型的な流れを示したので、参照してほしい。まず、3D-CADモデルをXVLモデルに変換し、XVL Studio Proへ読み込む。そこで製品を構成する部品間の干渉とクリアランス(部品間の隙間)をチェックすると、問題箇所の一覧ができる。問題箇所を詳しく見たい場合は、指示すれば、その干渉断面を2Dと3Dで同時に表示できる。それをDR参加者で確認し、果たしてそれが本当に問題か、問題であればどう解決するかを決定していく。問題箇所の一覧表はExcelのレポートとして出力できるので、そこに問題の詳細や担当者、納期等を記載していけば、最終的にDRの報告書が完成する。

図3●3Dデータを利用した干渉チェックの業務フロー
図3●3Dデータを利用した干渉チェックの業務フロー
(XVL Studio Proによる)
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 それを設計担当者にフィードバックすることで、3D-CADモデルが修正される。重要なのはこのプロセスを繰り返すことである。問題解決のための設計変更が、別の干渉を引き起こす可能性もあるからだ。

 “コンカレント・エンジニアリング”を進めれば進めるほど、日々新たな問題が発生することになる。これを、設計の早い段階で徹底的につぶしておくことが成功の鍵だ。XVL Studio Proでは、干渉チェックの結果から簡単にレポートを作成し、これをアクションプランとして参加者で共有することで、DRプロセスのPDCA(Plan Do Check Action)を促進することを目指している。

 DRに軽量なXVLを利用する最大のメリットは、大容量データをそのまま表示し、干渉問題を検出できる点である。図4に大規模データの表示例を示す。CADで数Gバイトレベルであれば、最近のノートPCでも十分実用的な速度で表示可能だ。新潟原動機の例を見ても分かるように、3Dデータで見るだけで、図面に不慣れな人も含め、関係者間での多くの情報が共有可能になるのである。

図4●大規模データを利用したDR
図4●大規模データを利用したDR
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 筆者には忘れられない言葉がある。「自分たちの設計しているものを初めて見ました」――XVLで大規模データを見た、ある技術者の発した言葉である。自分が設計している部品やモジュールは3D-CAD上で確認できても、複雑な製品はCADでは全体を表示できないのだ。擦り合わせ型の製品では、全体を見渡し、設計、生産技術、製造などの関係者が手軽にレビューできる仕組みが非常に重要になる。XVL Studio で目指したのは、まさにこの点にあった。