3Dでレビューする企業文化を育てる

 3Dモデルを利用したDRにいち早く取り組んできたのが、IHIグループでエンジンやタービン、プラントを製造販売している新潟原動機である。同社では、製造と設計拠点を結んだ画面共有による会議室システム上で、軽量3DモデルのXVLを利用したDRを行ってきた(図1)。使用しているのは、DMUツールのXVL Studioである。大型のエンジンやタービンは部品点数も多く、大変複雑な構造となっている。3D-CADでは表示すら難しいこうした製品の全体形状を、XVLで軽快に表示し、部品を分解しながら見たい場所をレビューしていくのである。

図1●新潟原動機における3Dモデルを利用したDR
図1●新潟原動機における3Dモデルを利用したDR
(左)画面共有した会議室システム、(中央)XVL StudioによるDR、(右)議事録作成
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 CADモデルを壊すことなく検証ができること、会議室システムの機能ですぐに議事録を残せることも、このDRの仕組みの大きな利点である。同社では、このシステムを予約不要の打ち合わせスペースに置くことで、誰もが手軽に3Dモデルを利用して打ち合わせできるようにした。しかも、立ち上げ期にはソフトウェアの操作を設計主体で行い、不慣れな製造サイドを支援していくことで、製造視点でのDRが進んだのだ。

 同社のプラントエンジニアリング部門では、この部門間DRの前に、設計部門内DRもXVLで行っている。設計の完成度が20%程度の段階から、「設計思想が反映されているか」「設計モデルは設計要件を満たしているか」「さらに設計を進める上で決定しなければならないことは何か」といった視点で、レビューを行っている。3Dモデル上での部品の移動・回転、断面作成や寸法計測といった機能を駆使しながらレビュー作業を進めていくのである。

 設計がある程度完成した後に行うのが前述した部門間のDRだ。プラントの土台を本社の設計部門が担当し、その上の部分を工場の設計部門が担当した場合など、接合部の擦り合わせに有効だという。さらに、顧客や工事業者と一緒にプラントの組み立てをレビューする際にもXVLを利用する。たとえば、プラントの大きさを把握するのにも有効である(図2)。同社技術センターの福岡和彦氏は、さらに、誰もが使える簡易な3DビューワやタブレットPC上の3Dビューワを配布することで、「製造現場ですら3Dを利用することが当たり前」という文化を醸成しようと意気込んでいる。

図2●新潟原動機の後工程におけるDRの様子
図2●新潟原動機の後工程におけるDRの様子
(左)工事関係者への説明とレビュー、(右)計測機能でプラントの大きさを把握
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