上海で最も目立つ広告スペースの1つである南京西路・新世界百貨の屋上にそびえるSamsungの広告
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 シャープが韓国Samsung Electronics社の日本法人から約103億円の出資受け入れを公表したのは2013年3月6日ことだが、その直前の3月1日から5日前後に、EMS(電子機器受託生産)世界最大手、Hon Hai Precision Industry社〔鴻海精密工業、通称:Foxconn(フォックスコン)〕の郭台銘董事長が一体、どこで何をしていたのかについて、EMS業界やフォックスコンのお膝元である台湾で改めて話題になっている。

 きっかけになったのは『日本経済新聞』(同年3月21日付)の「アップルの極秘計画 『大魚』を逃したか」という記事。Samsungとの調印を同月6日に控えていたシャープが、出資交渉を継続中のフォックスコンに対し発表前に直接説明しようと郭氏の居所を探ったところ、同月5日に来日するとの情報をキャッチ。ただ、郭氏が訪日した目的は、シャープとの出資交渉をするためでなく、米Apple社の次の秘密兵器「iTV」について同社幹部と会談するためだったのではないか。したがって、Appleとフォックスコンが共に「宿敵」とみなすSamsungと提携したことで、シャープはiTVという大魚を逃すことになったのではないか、という内容だ。

 台湾では通信社の『中央社』をはじめとする複数のメディアが即日、日経新聞の報道内容を伝えるとともに、Appleと日本で会談したかどうかについて、ノーコメントとするフォックスコン側の反応を報じている。

 ところで冒頭で「当時の郭氏の動静が改めて話題になっている」と書いたのは、日経新聞の記事に先立つ同月7日、すなわち、シャープがSamsungとの資本・業務提携を発表した翌日付で、台湾の夕刊紙『聯合晩報』が、同月1日から数日間の郭氏の行動を報じているためだ。

 ちなみに2012年8月末、郭氏は、個人名義で660億円を出資してシャープと共同運営する堺ディスプレイプロダクト(旧シャープ堺工場、SDP)で予定されていたシャープの奥田隆司社長との会談とその後の会見をドタキャンして雲隠れした。そのときも、郭氏が姿を現して最初に単独インタビューに応じたのは、聯合晩報だった。このインタビュー(記事は2012年9月3日付)で郭氏は、シャープとの提携では出資のみならず経営にも介入していく意向を初めて明らかにしている。