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特集から4年、データセンター向け直流給電がついに商用化

狩集 浩志=日経エレクトロニクス
2013/03/25 05:00
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 今から4年ほど前、日経エレクトロ二クスの2008年12月29日号で「直流給電、省エネの切り札に」という特集を組みました。当時、“直流”をテーマに特集をやりたいと編集部を説得して記事掲載にこぎ着けたのを昨日のように覚えています(Tech-On!でも2009年11月に「直流給電、CO2削減の切り札に」を3回連載で掲載しています。記事はこちら)。

 その特集の中で、「直流給電の導入が最も早く進みそうなのは、データセンターである」と言い切った私としては、その後、データセンターで実証試験は始まったものの、なかなか実用化されないことに、悔しさを覚えておりました。ですが、2013年3月21日、ついにさくらインターネットが商用環境にあるデータセンターで直流給電を採用したと発表しました(関連記事)。まさに感慨無量です。

 さくらインターネットは同社の石狩データセンターにおいて、直流給電システム「HVDC DC 12V方式」を採用したサーバー・ラックの稼働を2013年3月12日から開始し、まずはサーバー・ラック19基分に直流給電を用いるとのことです。データセンター業界の激しい競争の中で、直流給電の意義について理解を示し、いち早く導入を決めたさくらインターネット 代表取締役社長の田中邦裕氏の判断に感服するとともに、これまで基礎技術を積み上げ、検証を続けてきた関係企業に頭が下がる想いです(本誌は2012年10月1日号の特集「データセンター協奏曲」で田中社長のインタビュー記事を掲載しています。日経エレクトロニクス Digitalの記事はこちら)。

 こうした直流給電のシステムは1社では構成できません。高電圧の電源から変圧器、12Vの電源、対応サーバーやネットワーク機器に至るまで数多くの企業の協力が必要です。しかも、まだまだ規模は小さく、大きな収益が得られるわけではないため、各企業の担当者は自社をそれぞれ説得しながら取り組みを続けてきたはずで、それこそ並大抵の苦労ではなかったことでしょう。

 実際、今回商用化された「HVDC DC 12V」は紆余曲折を経て完成した方式です。特集で取材した2008年ごろは、サーバーに340~380Vの高圧直流(HVDC)を直接供給するHVDC方式を検討していたからです。ですが、サーバー機の1台1台に高電圧の電源変換装置を取り付けるのは、安全性や信頼性、さらにコスト的な問題から大きな障壁となっていました。

 この問題に対して、NTTデータ先端技術は、サーバー・ラックごとにHVDCを12Vに変換する集中電源を搭載し、そこから12V駆動のサーバー機やネットワーク機器に電源を供給する方式を提案しました。サーバー近くまでは高電圧を用いて、高効率で電力を供給し、サーバー機には電源を簡素化できる12Vで供給するという“いいとこ取り”の形に収まっています。

 今回は、さくらインターネットのデータセンターでまずは商用化の一歩を踏み出したわけですが、2008年の特集では「データセンターへの採用が進んだ後、さらにオフィスや工場、店舗、家庭などに徐々に浸透していきそうだ」と執筆しました。本当にそうなるか今後も追いかけたいと思っておりますが、朗報もあります。

 電気・電子技術などの国際規格を決める国際機関であるIEC(国際電気標準会議)の第34代会長に、パナソニック顧問の野村淳二氏が選出され、2014年に就任されます。野村氏はパナソニック電工時代から、直流給電を進めるべきとの考えを持ち、同社内での開発を先導してきました。同氏はIEC会長に就任したら何をやりたいのかという問いに対して、「直流による電力網を加えた交流と直流を一緒にした社会を作るべきとの考えを説明した」とのこと。

 さらに、「直流に関する安全規定を含めて世界で基準を決めることができるのはIECだけであり、だから私は会長をやりたいと主張した」との会長就任への背景をうかがいました(詳細は本誌の2013年1月21日号のインタビュー「直流給電の標準化、IECがやらずして誰がやる」をご覧ください。日経エレクトロニクス Digitalの記事はこちら)。直流給電はデータセンターだけでなく、さまざまな分野に影響を及ぼすことは間違いなさそうです。

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