会社・事業全体の主要プロセスと情報の流れ

 会社・事業全体の「主要プロセスと情報の流れ」について、目指す姿と現状の分析により、課題を認識してズレの改善を企画する。

本連載第11回で定義した「これからのPLM」のコンセプトや範囲を基に、自社の商品(製品やサービス)のライフサイクル全般にわたる自社内の主要プロセスをピックアップ。さらに国内外の自社拠点/ビジネスパートナーも主要なプロセスと見立てて、それらプロセス間の情報の流れ・活用状況を俯瞰的にみて、目指す姿と現状を分析。その上で、今後想定されるリスクも加味した課題として抽出する(ここでは主要プロセス内の細かな課題には触れない)

◆上述した個々の商品ライフサイクルだけでなく、商品群として束ねた形で、かつ時系列的な捉え方で、主要プロセス間の情報の流れにおける「目指す姿と現状」を分析。今後想定されるリスクを加味した課題として抽出する。これは、“ものづくり”としては、品質情報などの把握・分析・アクションという基本的な行為であり、本連載で述べてきた“もの・こと”ビジネス・モデルとして、市場や顧客の分析も含めた重要な行為でもある。

◆“もの・こと”ビジネス・モデルにおいては、上記とは逆方向の“市場や顧客に対して商品の情報を発信・提供する情報の流れ”も重要であり、「これからのPLM」の機能の1つとして新たにカバーすべきポイントとなる。

◆以上の課題を本連載第13回で落とし込んだ全社戦略、事業戦略と照らし合わせ、目指す姿に対するズレ(ギャップ)として認識した上で改善方向(解決方策と実現時期)をまとめる。

◆それらを共有化し、改善企画案としてまとめる。

 以上をまとめる意味は、まず全社・事業全体の主要プロセス間における情報の流れの課題について、大きく改善する方向を導き出すことにあるが、付随的な意味としては、それが「これからのPLM」の範疇なのか、他のSCM(Supply Chain Management)などの基幹系システムの範疇なのか大きく区分けするためでもある。大企業ほど、基幹系とエンジニアリング系(と区別して呼ぶこと自体がよろしくないのだが)の主管機能が縦割りになっており、全社活動を通した“主要プロセス”と“情報“の広範な流れについて、在るべき姿や課題を逐一共有、改善することができていないと見聞する。ビジネス環境やグローバルなバリューチェーンの変化が激しい業界こそ、この課題認識と変化への対応行動が常態的に必要だろう。

 なお、これらの課題の顕在化を助ける一手法として、実はBI(Business Intelligence)が活用できる。ERP(Enterprise Resource Planning)系でのBIは進んでいるかもしれないが、PLM系のBI活用はもっと進めるべきだろう(Intelligence:インテリジェンスについても本記事末尾で補足説明する)。

 以上のアクションについては、本来は経営者がトップダウンでトリガーをかけて進めるべきだが、大企業であれば経営企画部などの機能が主導することも多いはずである。そして、情報システム部門協働のもとに、関係業務部門の幹部部長クラスが企画をまとめ、経営トップに上げて、経営者を責任者として企図・実行するやり方が現実的だろう。これら全社戦略の関係付けとその戦略の落とし込み、さらにこれに基づいた「目指す姿」や現状分析、課題認識、ズレの改善の企画などを“グランドデザイン(活動の憲法)”として明文化。これを経営トップから関係者まで共有しながら進めることを強く勧める。

 活動当初からの経営者の参加は必須であり、活動の「魂」として経営者のビジョン(最終的にめざす姿、思い)を最上位の目的・目標に入れ込むことが成功の秘訣となる。