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第2回●「第3ラウンド」を迎えたアジアのエレクトロニクス市場

第2回●「第3ラウンド」を迎えたアジアのエレクトロニクス市場

2013/03/19 06:00
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 今回は、2012~13年にどのような市場変化が起こっているかを考察する上で、誰もが知っているスマートフォンの世界ではなく従来型の携帯電話機(フィーチャーフォン)の動向を、アジア地域を中心に見ていきます。現在ではスマートフォンが主流になりつつあるとはいえ、世界ではフィーチャーフォンの支持者が根強く存在します。それには大きく三つの理由があると筆者は考えます。

 第1に、電池寿命の差です。スマートフォンは多機能であるがゆえに、GPSやインターネットを頻繁に利用するとあっという間に電池の充電量が減ってしまう。これに対し、フィーチャーフォンは機能が絞られていることもあって、充電量の減り方は緩やかです。通話機能をメインに使うユーザーには、今でもフィーチャーフォンが圧倒的に支持されている。この状況は国内外に共通しています。

 第2に、スマートフォンの“持ちにくさ”があります。工事現場の作業員の方などに、過去20年間で最も業務の改善効率につながった道具は何かと聞いてみますと、こぞって携帯電話機(フィーチャーフォン)という答えが返ってきます。そこには、携帯電話機の導入により、連絡を取る際にいちいち事務所に戻る必要がなくなったという理由と共に、「高所やぬかるみのような環境でも手に持って使いやすい」というフィーチャーフォンの特徴が、大きな理由としてあるようです。スマートフォンの形状は一様に板状で厚さは薄く、持ちにくさを否めない。「何かの作業をしながらの通話にはスマートフォンはまったく適さない」という声もあります。

 第3に、所持するのに必要なコストの差です。スマートフォンはインターネット接続を前提としており、そこが利便性の高さにつながっているわけですが、利用者は当然、その分の費用を自ら負担しなくてはならない。そのコスト負担にためらいを感じる心情も、やはり世界共通といえます。

 調査会社の米IDCによれば、2012年におけるフィーチャーフォンとスマートフォンの出荷台数の比率はおよそ6:4。依然としてフィーチャーフォンの方が比率が高く、2017年においても携帯電話機市場の約1/3をフィーチャーフォンが占めると同社は予測しています。スマートフォン全盛のように思われがちな昨今ですが、フィーチャーフォンがまだ十分に大きな市場を持ち、今後も持ち続けるというのが現実なのです。以下で述べる「携帯電話機」も基本的にはフィーチャーフォンを指しているとお考えください。

 ご存じの通り、携帯電話機はこれまで、カメラ機能や音楽再生機能などさまざまな機能を取り込みつつ進化してきました。基本機能はあくまでも通話ですから、信号処理に使うベースバンドICや通信機能に使うトランシーバICといった半導体チップが必要です。2005年ごろまでの携帯電話機では、こうした機能ごとに別々の半導体チップを搭載していたため、一つの端末に数多くのチップが必要でした(図1)。

図1:2005年前後の国内メーカーの携帯電話機。端末当たり12個以上のチップが使われている。
図1:2005年前後の国内メーカーの携帯電話機。端末当たり12個以上のチップが使われている。

 ところがその後、四つのチップで実現されていた機能が2チップに統合され、さらにその機能が1チップに統合される、といった形で機能統合が進みました。その背景にあったのは、半導体のプロセス技術の進化です。半導体では、プロセス技術が1世代進むとチップ面積をおおよそ半減できます。当初4チップだったものが、次の技術世代では2チップ、さらに次の技術世代では1チップに、と進化していったわけです。ベースバンド機能とトランシーバ機能、さらにアプリケーション機能などを含む携帯電話機の基本機能は、90nmや65nmの技術世代で1チップに統合されました。

 携帯電話機の基本機能を業界に先駆けて1チップに統合したのは、米Texas Instruments(TI)社です。同社は「LoCosto」と名づけた統合型チップを2006年に発売しました(図2)。ターゲットとしたのは、アジアやアフリカなど、携帯電話機の普及がまさに始まろうとしていた新興地域の端末でした。TI社に続いて同様の機能を持つチップを開発したのが、ドイツInfineon Technologies社(同社の携帯電話機向けチップセット事業は、現在は米Intel Mobile Communications社に統合)です。同社が市場投入した「X-GOLD 100」シリーズは、パワー・アンプICとメモリ、Bluetoothチップを加えれば、大半のユーザーの要求を満たす携帯電話機を組み上げることができるチップです。多くの市場で広く採用され、中東やアジア地域で販売されている携帯電話機では現在でも採用事例があります。例えば、フィンランドNokia社の2012年のグローバル市場向け端末「Nokia X2」には、同シリーズの「X-GOLD 110」が採用されています。TI社やInfineon社が市場投入したこれらのチップは、“1チップ携帯電話機”の「第1ラウンド」の製品といえるでしょう。

図2:TI社が2006年に発売した統合型チップ「LoCosto」
図2:TI社が2006年に発売した統合型チップ「LoCosto」

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