スマート社会を実現するエネルギー技術の情報をお届けする「エネルギー」サイトに投稿の全記事を対象に、直近2週間(2013年3月4日~3月17日)でアクセス数が多かった20本を紹介する。前回は電池の話が上位に並んだが(Tech-On!関連記事)、今回は、新エネルギー関連を扱った記事が1位と2位に並んだ。

 よく読まれた第1位の記事のタイトルは、「進む二酸化炭素の農業利用――温暖化の「悪玉」を有用資源に」だった。第3のエネルギーも効率良く使おうという試みの紹介である。この記事によれば、発電機の稼働で生まれる電気のほか、排熱も利用する「コージェネレーション(熱電併給)システム」が、エネルギーの利用効率が高い省エネ技術として広まりつつある。加えて、排気に含まれる二酸化炭素(CO2)をも有効に使う「トリジェネレーションシステム」と呼ばれる仕組みが注目され始めた。

 そのトリジェネレーションには、CO2を作物の生育増進に利用する「農業トリジェネレーション」と、アルカリ廃液の中和に利用するなど、工業的に使う「工業トリジェネレーション」がある。世界的に利用が広がっているのが農業利用だという。

 例えば、米カリフォルニア州キャマリロにあるトマトの温室栽培場では、米GE(ゼネラル・エレクトリック)製のガスエンジンを設置している。発電時の排熱を温水に変えて温室の加温に利用するとともに、作物の生育を促進するため、CO2濃度の高くなったガスエンジンの排気を温室に送り込むトリジェネレーションを構築した。

 発電効率は45.5%で、排熱利用を含めたコージェネシステムの総合熱効率は90%を超える。温室に投入される排気中のCO2は、年間で2万1400tに達する。ガスエンジンは、地域の電力需要がピークに達する昼前後を中心に稼働しているので、負荷平準化に貢献することにもなる。

 よく読まれた第2位の記事のタイトルは、「メタンハイドレート・ガス:日本近海で天然ガスの生産に成功」だった。メタンハイドレートから天然ガスを生産することに独立行政法人JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)が成功し、愛知県沖での実験生産を始めた。実験地点は、沿岸から200海里(約370km)内となり、資源開発を含む経済的主権が及ぶ排他的経済水域内だ。採取される天然ガスは、日本の資源となる。主成分はメタンで他の天然ガスと変わらないが、メタンハイドレートから産出する天然ガスなので、「メタンハイドレート・ガス」と呼ぶという。

 ここで、「ハイドレート(hydrate)」とは、水分子による正五角形の格子などで構成した結晶構造を指す。内部に分子サイズの空間を備えたカゴ状になっており、ここに別の分子を取り込める。メタンを包含したハイドレートが「メタンハイドレート」である。今回の実験生産では、採取したメタンハイドレートから安定的、継続的に水とメタンを分離できるようにした。

 第1位と第2位は、どちらも将来の新エネルギーの明るい系の話題だったが、第3位の記事は、電力自由化がぶつかっている課題を採り上げたものである。そのタイトルは「電力自由化がつまずいた理由――新電力、わずか「3.5%」」である。電力改革では「発送電分離」がとかく注目される。しかし、ビジネス目線で見たときに重要なのは電力会社(一般電気事業者)以外の企業にとっての事業機会の大きさや自由度だろう。

 現在進められている電力改革では、家庭部門を含む全需要家に「選択の自由」を保障することを目指す。そのためには選択肢として、電力小売り事業者である新電力(特定規模電気事業者)の充実や電力サービスの多様化は欠かせない。発送電分離は電力会社と新電力の公平な競争を後押しする手法だが、問題は結果として本当に競争が促進されるかどうかにある。というのは、既に家庭部門や小規模需要家を除いて、自由化は制度として実現している。だが、自由化されているはずの大口需要家向け市場で、十分に「選択の自由」があったとは言えない状態が続いてきたからだ。

 実際、自由化部門における新電力のシェアは今も3.5%しかない。自由化に合わせて電力会社や卸電力事業者、新電力などが電力を売買する卸電力取引所が立ち上がっている。しかし、市場取引量は小売り市場全体の0.6%に過ぎない。これは新電力にとって、顧客の要望や変動する電力需要に応じて柔軟に電力を調達する手段が限られていることを意味している。

アクセス記事ランキング(3/4~3/17)
エネルギー
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