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システムLSIの謎 その3

やっとスタートラインに

小島 郁太郎=Tech-On!編集
2013/03/21 00:00
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国内大手半導体メーカーの1社、ルネサス エレクトロニクスの新社長に就いた鶴丸哲哉氏 約1年前に日経エレクトロニクスの記事向けに撮影したもの(撮影:加藤 康)。
国内大手半導体メーカーの1社、ルネサス エレクトロニクスの新社長に就いた鶴丸哲哉氏 約1年前に日経エレクトロニクスの記事向けに撮影したもの(撮影:加藤 康)。
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 チップの構造やアーキテクチャといった技術的な視点ではほとんど同じであるマイコン(マイクロコンローラ)とシステムLSI(SoC:system on a chipと同じ。以下SoC)。前者の事業は存続させるけど、後者のそれは別会社にしたり清算したりするという国内半導体メーカーは複数ある。儲かるSoC事業と儲からないSoC事業、その差はどこにあるのか。それを考える連載の3回目。1回目2回目と同様に、先輩と後輩のやりとりという形で記事を進める。

後輩 ランチに出る前に、米Qualcomm社も国内半導体メーカーもSoCを作っているけれど、両者の成り立ちには違いがあるって仰ってましたよね。

先輩 そうだったね。じゃあ、Qualcommの成り立ちからいこうか。社名のQualcommがQuality Communication(品質の良い通信)に由来していることからも分かるように、高品質な無線通信の実現をミッションとして設立された。そして、CDMA(Code Division Multiple Access)技術を開発した。当初は、CDMA技術の普及を図るため、ICだけではなく、携帯電話機や基地局装置も作っていたんだ。その後、ウリモノを、同社の技術を実装したICと、技術のライセンスに絞り込んだ。つまり、ICは技術は売るための手段であって、売っているのは基本的に技術っていうのが同社のスタイル。

後輩 なるほど、ファブレス半導体メーカーとして経営しているのにも合点がいきますね。

先輩 一方で国内半導体メーカーは、総合エレトロニクス・メーカーの半導体部門としてスタートした。メモリを除くと多くのIC開発では、上流設計、つまり、アーキテクチャ設計や論理/回路設計は主に機器部門が行い、下流設計、つまり、レイアウト/物理設計、および製造は主に半導体部門が行っていた。総合エレトロニクス・メーカーの機器部門と半導体部門の役割分担としては、特に問題はないけどね。

後輩 ちょっと待って下さい。QualcommがIC開発で行っているのは、総合エレトロニクス・メーカーの機器部門が行っていることと同じですよね。ファブレスとIDM(integrated device manufacturer)の違いがあるとは言え、一般には半導体メーカーとして一括り(ひとくくり)にするのはそもそも無理がありますね。

先輩 市場に出荷するものはICで同じだから、それはやむを得ないじゃないの。そんなことよりも、総合エレトロニクス・メーカーの半導体部門として運営してきた部署が、そのままというか、その頃の気風を保ったまま、独立した半導体メーカーになったことに無理があったよね。

後輩 どういうことですか。

先輩 よく「下請け体質が抜けない」って言われているけど、それじゃないかな。つまり、上流設計に積極的になれないから、それがうまくできるようにならない。エレクトロニクス・メーカーの半導体部門だったときには、機器部門に気づかって半導体部門から上流設計に関して提案することはあまり行われていなかった。また、国内のエレクトロニクス・メーカーはさまざまな機器を開発していたので、競合する機器を開発する競合メーカーからICの注文があったきたときに、競合メーカーが警戒して上流設計に関して突っ込んだ話し合いが行われなかった。これでは、社内のお客さん相手でも、社外のお客さん相手でも、上流設計の力がなかなかつかない。

後輩 でも、先輩。国内半導体メーカーの設計力って、特に海外メーカーと比べて見劣りしないですよね。

先輩 確かに低消費電力化の技術とか、信頼性や品質を確保する技術とか、世界の中でも優れている技術をたくさん持っている。だけど、それを、市場やアプリケーションのニーズに合わせ込むことこそが上流設計におけるエンジニアの腕の見せ所だろう。むやみにハイスペックの設計をしてしまえば、結局、儲けが少なくなってしまう。上流設計での経験不足が、現在の苦境の根底にあると僕は思うんだ。

後輩 海外の半導体メーカーでも、機器メーカーから分離独立した企業は少なくないですよね。

先輩 機器メーカーから分離独立した半導体メーカーは、程度の差こそあれ、独立した企業として歩むための授業料を払ってきたと思うよ。ただ、国内の半導体メーカーよりも分離独立した時期が早かったことや、人材の流動性が高かったことで、現在は国内半導体メーカーよりも良い状態にある場合が多い。

後輩 上流設計での経験不足だけで、今の苦境になったんですか。

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