「JTNフォーラム 2013 Spring~日本の製造業復活の芽はここにある~」の開催が1週間後に迫りました。このフォーラムの狙いについては、日経エレクトロニクスの大久保編集長が「エディターズ・ノート」で熱く語っています。

 それに少しだけ補足しますと、日経BP社の電子・機械系の4媒体(日経エレクトロニクス、日経ものづくり、日経Automotive Technology、Tech-On!)はこれまでも、情報の出し手としてより質の高い情報をより多くご提供するために、紙媒体や電子媒体に加えて、さまざまなセミナーを開催してきました。ただ、その多くは実務的な内容でした。これは、我々の日々の取材活動を通して皆様の悩みなどを直接うかがう機会が多く、少しでもそれにお応えできればと企画してきたためです。

 しかし、今回のJTNフォーラムは、こうしたセミナーとは少し毛色が違います。実務というよりは未来志向の内容です。大久保編集長も述べていますように、最近は株価上昇や円安の影響を受けて明るいニュースが増えていますが、それと日本の製造業の競争力云々とは少し別の話。製造業の未来については、真剣に考えていかなければなりません。

 ところが、そうした議論は気分が暗いときにはなかなかできません。今のように気分が明るく余裕があるときにこそ、考えておきたいものです。JTNフォーラムは、2つのアングル(専門トラック)から、その場を提供します。以下では、日経ものづくりが企画しました専門トラック「日本の工場の未来が見える」についてご紹介します。

 実は、日経ものづくりではことし2月下旬から3月上旬にかけて、ニュース配信サービス「日経ものづくりNEWS」の読者を中心に、「『強い工場』の条件」についてWeb上でアンケート調査を実施し、488の回答をいただきました。

 この調査の中で、「中国以外にも生産拠点を置く『チャイナ+1』の動きが広がっています。その1つとして日本国内のどこかという選択肢もあり得ると思いますか」と聞いたところ、77%の方が「ある」と答えられました。世界で戦う条件さえ整えば、日本でものづくりをしたい――。これが、多くの技術者が望む姿なのです。では一体、その条件とは何なのか。その1つの答えが、来週開催するJTNフォーラムの中にあります。

 専門トラック「日本の工場の未来が見える」のトップバッターは、精密金属加工メーカーのダイヤ精機取締役社長の諏訪貴子氏。日経ものづくり2013年3月号の羅針盤(インタビュー記事)でご登場いただいた方です。手前味噌で恐縮ですが、日経ウーマン(日経BP社)「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2013」大賞にも輝いた、時の人でもあります。

 諏訪氏は大学の工学部を卒業後、大手メーカーの生産技部門でエンジニアとして活躍。その後、急逝したお父様の跡を継いでダイヤ精機に入社し、社長に就きます。そんな諏訪氏は大手メーカーでの経験を生かしながら、中小企業の身の丈に合った生産管理手法などを導入。2010年から3年連続で売り上げを伸ばすなど、同社を大田区を代表する企業に育て上げました。そこには、日本で生き残る、未来の中小企業の1つの「解」があります。

 続いて、電機と自動車の両分野から1社ずつ大手メーカーにご登壇いただきます。

 まず電機分野から、富士通が「『Made in JAPAN』で価値を創造する」というタイトルで講演します。同社のパソコンやタブレットは、特に法人ユーザー向けに高いシェアを誇ります。なぜだと思いますか。他社にはない付加価値を盛り込んでいるからです。同社の事例からは、日本ならではの「価値」を創造する未来の工場の姿が浮き彫りになります。

 次の自動車分野からご登場いただくのは、トヨタ自動車です。上述のWeb上でのアンケート調査で、強い工場を持つメーカーを尋ねたところ、2位のホンダにダブルスコア以上の圧倒的な差をつけて1位に輝いたのが同社でした。今回の講演タイトルは「自動車製造にみるFAロボットの今と未来」。未来の工場の生産技術に不可欠なFAロボットの活用法が見えてきます。

 専門トラックの最後を飾るのは、日経ものづくりのコラム「これがムダなんや」でもお馴染みの、PEC産業教育センター所長の山田日登志氏です。ご存じの方も多いと思いますが、山田氏はトヨタ生産方式の生みの親である大野耐一氏に師事し、ソニーにセル生産を導入するなど実に300社近くの工場を指導してこられた、カイゼン界の重鎮です。

 その山田氏が当日、カイゼン指導先の富山から駆けつけ、専門トラックの最後に特別講演「日本で強い工場を創るために」をしてくださることになりました。日本の工場を最もよく知る山田氏が、未来に向けて日本の工場が歩むべき道を示唆します。

 JTNフォーラムは1週間後の3月22日(金)開催です。

 ちなみに、日経ものづくりでは2013年4月号で山田氏に再登場いただきます。「これがムダなんや」の工程改善編です。お楽しみに。