ドイツ連邦太陽光発電産業協会(BSW-Solar)が発表した、ドイツでの100kW以下の太陽光発電システムに対するFITの買い取り価格(濃い青色の線)とシステム価格(オレンジ色の線)の低減の推移、および太陽光発電システムの年間導入量。2012年の導入量は速報値では7.6GWである。
ドイツ連邦太陽光発電産業協会(BSW-Solar)が発表した、ドイツでの100kW以下の太陽光発電システムに対するFITの買い取り価格(濃い青色の線)とシステム価格(オレンジ色の線)の低減の推移、および太陽光発電システムの年間導入量。2012年の導入量は速報値では7.6GWである。
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 つい先日、経済産業省 資源エネルギー庁が、2012年12月までの日本の再生可能エネルギーの導入状況を発表しました(関連記事)。再生可能エネルギーといっても、その大半は太陽光発電だったので太陽光発電中心に話をすると、2012年度の太陽光発電システムは、歴史的な「認定量」になる可能性が高まってきました。

 認定量は2012年12月末までで4.7GWで、2013年3月末までにはさらに大幅に増える可能性があるからです。2012年は、ドイツ、イタリアの他、米国や中国も太陽光発電システムの導入量を大幅に伸ばしています。日本の太陽光発電もこれらの国々と同様、「離陸」したといえるかもしれません。

 ちなみに、認定量というのは、2012年7月に始まった「再生可能エネルギー固定価格買取制度」(FIT)において、太陽光発電システムの設置者が経済産業省の地方機関である経済産業局に報告した予定導入量のことです。認定されても、実際の稼働は2~3年後という例もあり、認定量がそのまま2012年度内に稼働するわけではありません。

 もっとも、2012年末までに認定を受けたシステムの多くは、稼働までにそれほど時間はかけないしょう。というのは、数十MWかそれ以上の規模のシステムは全体からするとわずかで、平均では100kW前後の規模です。この規模であれば、設置にそれほど時間はかかりません。加えて、同制度の買い取り価格は、認定を受けた上で電力会社と接続契約を済ませた時点でないと確定しません(参考記事)。仮に、電力会社との契約が2013年4月以降であると、42円/kWhという高い買い取り価格で売電できなくなります。

買い取り価格は適正か

 ドイツをはじめとする、太陽光発電で離陸した国・地域の多くは、このFIT制度を導入しています。FIT制度が成功するかどうかは、買い取り価格の設定に大きく左右されます。買い取り価格が高すぎると、導入が急激に増えすぎ、結果として一般家庭の電気料金の負担が増えます。ボールを一番遠くに投げたい場合は、投げ上げ角度に最適な角度があります。真上に近い方向にボールを投げると、目の前に落ちて大失敗します。太陽光発電もこれに似ています。もちろん、買い取り価格が低すぎても導入が進まず、導入促進策としての役割を果たしません。

 買い取り価格が高すぎて失敗した代表例はスペインです。スペインでは当初、買い取り価格が非常に高く、2007~2008年に爆発的に太陽光発電システムの導入量が増えたために、翌年には導入量を大幅に抑えざるを得なくなり、一度膨らみかけた市場が急速に萎んでしまいました。

 成功した例と筆者が考えるのは、ドイツです。ドイツはFITの前身となる促進策も含めると20年近くも太陽光発電システムの助成制度を続けていますが、実際に大規模な導入が始まったのは実はこの4年ほどです。2005~2006年ごろは、70円/kWh相当と高い買い取り価格でしたが、市場の反応がやや鈍く、そのおかげで市場の拡大とシステム価格の低下、そして買い取り価格の低減が比較的バランスよく進みました。ドイツ連邦太陽光発電産業協会(BSW-Solar)の資料を見ると、FITの価格低減とシステムの価格低減が非常によく一致しているのが分かります。

 一部にドイツのFITは失敗だったという指摘があるのは知っています。ただし、そうした指摘の多くは、具体的に何をもって失敗としているのかを明確にしていません。ドイツのFITは、太陽光発電の促進策、そしてエネルギー政策としては、世界で初めての試みにもかかわらず大成功でした。ドイツが2012年末までに導入した太陽光発電システムは約32GW。世界の総導入量が100GW超ですが、実にその1/3がドイツにあるわけです。風力発電など他の再生可能エネルギーも含めてドイツでは電力の総需要量の25%超を賄う結果となりました。  太陽光発電の発電量に限れば、電力の総需要量の5%ほどですが、夏のピーク電力低減には絶大な威力を発揮し、その結果として、化石燃料の価格が下がりました(関連記事)。従って、電力の大口需要家も多大な恩恵を受けたのです。