メタンハイドレートから天然ガスを生産することに独立行政法人JOGMEC(石油天然ガス・金属鉱物資源機構)が成功し、愛知県沖での実験生産を始めた(日経電子版の有料会員限定記事)。実験地点は、渥美半島から約80km、志摩半島から約50km。沿岸から200海里(約370km)内となり、資源開発を含む経済的主権が及ぶ排他的経済水域内だ。採取される天然ガスは、日本の資源となる。主成分はメタンで他の天然ガスと変わらないが、ここではメタンハイドレートから産出する天然ガスを「メタンハイドレート・ガス」と呼ぶ。メタンハイドレート・ガスにまつわる疑問を調べた。
メタンハイドレートとは
「ハイドレート(hydrate)」とは、水分子による正五角形の格子などで構成した結晶構造である。内部に分子サイズの空間を備えたカゴ状になっており、ここに別の分子を取り込める。メタンを包含したハイドレートが「メタンハイドレート」である。今回の実験生産は、採取したメタンハイドレートから安定的、継続的に水とメタンを分離できるようにしたものである。分離には「減圧法」を使う。地底あるいは水底の高圧状態から一気に圧力を下げて分離を促す。
メタンハイドレートは、低温または高圧下で存在し、1気圧なら-80℃以下、10気圧で-30℃以下、100気圧では12℃以下が、存在する条件となる。自然界では、北極圏や南極圏などの永久凍土層や数十気圧を受ける深海の水底に埋蔵の可能性がある。地中深くは、高圧だが地熱で高温になるので存在できない。メタンは、天然ガスや石油と同じく、植物や動物に由来する有機物から出来ている。世界各地に存在していると推測されており、日本近海でメタンハイドレートの埋蔵が確認されているのは、主に水深数百mの水底から、さらに数百m程度下の地層までである。