前回は、大部屋で用いる道具を紹介しました。今回は、大部屋が備える機能を取り上げます。大部屋は、[1]組織の壁を越えた製品開発(コラボレーション)、[2]プロジェクトにおける課題の早期予測・解決(フロントローディング)、[3]意思決定の効率化と支援、という3つの機能を持っています。以下、これら3つの機能という観点から大部屋が組織やプロジェクトの目標達成にどう貢献するのかについて説明します。

[1]組織間の壁を越えた製品開発の実現(コラボレーション)

 よく「組織の壁を壊す」というようなことが簡単に言われますが、実際はかなり難しいものです。そこで大部屋の出番となります。

 大部屋は、チーム全員が参加して目標達成を目指す場です。前回紹介した道具を用いて共通の目標を設定し、コラボラティブな大日程を作り、定期的に見える化のミーティングを実施していれば、自然に組織間の壁がなくなっていく――。そんなパワーを大部屋は持っています。なぜでしょうか。

 例えば、大部屋で製品開発に取り組む場合、そこで開催されるミーティングには全ての部門およびチームのメンバーが参加します。従って、チームメンバーは常に製品のライフサイクル全体を意識しておかなければなりません。

 筆者が以前所属していた豊田エンジニアリング(本社名古屋市)では、TMS(Toyota Management System)、TDS(Toyota Development System)、TMSS(Toyota Marketing & Sales System)、Total TPS(Toyota Production System)などに基づいた製品ライフサイクルの考え方を提唱しています(図11)。製品ライフサイクルと各部門の業務がどのように関連しているかを分かりやすく示したものとして、良い例だと思います。

図1●豊田エンジニアリングが提唱している製品ライフサイクルの考え方