日経エレクトロニクス

日本の技術者や製造業に対し、メディアがやらねばならないこと

大久保 聡=日経エレクトロニクス
2013/03/11 05:00
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 今日は3月11日。痛ましい東日本大震災に襲われてから丸2年がたちました。私は当時、東京ビッグサイト 会議棟の最上階近くのフロアにて、日経エレクトロニクス主催のセミナーに立ち会っていました。突然の激しい揺れに襲われ、セミナーを中止、参加者の皆さんを屋外まで誘導、携帯電話がつながらずに苦労した家族の安否確認、長時間待っても来ないバスを見限り徒歩による長時間の帰路など、まるで昨日のように思い出されます。自分の経験以上に、震源地に近い地域の皆さまの状況を見ると、自分は何であるか、社会に対して何ができるのかを深く考えるきっかけになりました。

 東日本大震災以降の日本を取り巻く状況を見ると、その考えの答えになかなか至ることができません。電力不足や歴史的な円高、海外企業との競争激化など、日本の製造業は困難な状況にあります。昨年末の政権交代による、いわゆる「アベノミクス」で株価上昇や円安が進み、2013年3月期の決算が当初の予測よりも好転する企業があるものの、日本の製造業の競争力にそのままつながるかどうかは楽観視できません。日本の製造業がかつてのような新市場を生み出す活力を取り戻すには、まだ足りないところがあるとみられるからです。我々も取材を通じて感じることは多々あります。

 そうした閉塞状況を打破するために、我々のような技術系メディアは何ができるのか。それは、閉塞状況を打ち破れる“芽”を一つでも多く、皆さんに提供することではないか。こうした考えから、弊社が昨年10月からTech-On!上で始めた企画が、情報発信サイト「Japan Technology Next」(略してJTN)です(JTNのトップページ)。

 JTNは、日本の技術や技術者をメディアとして全力でバックアップする企画でして、日経エレクトロニクスや日経ものづくり、日経Automotive Technology、Tech-On!といった日経BP社の電子・機械系の媒体が一体となって運営しています。日本の技術者の皆さんが次の第一歩を踏み出すために必要なことは何かを考え、企画運営しています。これまでに、経営者や最先端を走る技術者のメッセージを伝えるコラム、新製品・新技術が生まれるまでの苦労と葛藤をドキュメンタリー・タッチで描くコラム、そして技術者や製造業が向かうべき先を伝えるコラムを設置しています。

 日経エレクトロニクスではさらに、日本発の技術や次代を担う研究開発を表彰する「NEジャパン・テクノロジー・アワード」を設立し、まずはワイヤレス技術に焦点を合わせて活動を始めました。10件の候補を選出し、日経エレクトロニクス1月21日号から毎号、誌面にて各候補の特徴を詳しくお伝えしています。日経エレクトロニクスの4月1日号で、すべての候補の特徴紹介が終わりまして、2013年5月には審査委員会が10件の中から1件、最優秀賞を選定いたします。アワードの対象分野は今後、順次広げていく予定です。

 ただ、「メディアでできることは何か」を考えると、JTNの活動範囲をもっと広げる必要があると常々感じています。Tech-On!というオンライン上の活動や、日経エレクトロニクスという誌面の活用で十分なのだろうか・・・。そう考えると、足りないところがいくつか見えてきました。その一例が“ライブ感”。やはり、ものづくりや研究開発に日々携わっている方々から直に話をうかがうと、文字数やページ数の面でどうしても限界がある誌面に比べて熱意や情報がより多く伝わってきます。

 情報をお伝えし切れない思いは、実は記者にもあります。日経エレクトロニクスの特集記事や解説記事を1本執筆する場合、取材件数が2桁に達することはざらです。その中から“先見性がある”“優れている”“広い分野に関係する(関係しそうだ)”という観点で取材内容の中から情報を抜き出し、記事にまとめています。そうなると、例えば取材内容全体の1~2割、多くても3割程度しか紹介できず、他の情報は取材ノートや記者の頭の中に埋もれてしまいがちです。その中には、技術者の皆さんにとって次の一手につながるヒントも隠れているはずです。こうした情報を皆さんにお伝えする場として2011年から「NEスペシャルレポート」というセミナーを開催してきましたが、特定分野に絞っての開催でしたので、多方面の情報を皆さんにお伝えする機会をつくれずにいました。

 そこで、JTNはWebや誌面の限界を超えることが必要と考え、こうした第一線で活躍する方々の言葉や、記者が紹介し切れない情報をお伝えできるイベント「JTNフォーラム 2013 Spring~日本の製造業復活の芽はここにある~」を企画し、3月22日(金)に開催することにしました。基調講演として、数学をものづくりの世界に生かす東京大学教授の西成活裕氏、新しいビジネスモデルでEV開発に取り組むSIM-Drive執行役員の眞貝知志氏、ホンダで日本初のエアバッグ開発を手掛けた中央大学教授の小林三郎氏を迎えて、ものづくりにかける思いを語っていただき、午後の専門トラックでは各媒体が取材現場から見つけた新市場創出につながる技術などを解説します。

 日経エレクトロニクスの専門トラックでは、日本のエレクトロニクス産業が期待する医療/ヘルスケア、センシング/表示、有機EL、パワー半導体の4テーマで専門記者が登壇します。医療/ヘルスケアでは医療関係者の講演や対談、センシング/表示では日経エレクトロニクス創刊1100号特集「やさしい機械」、有機ELでは期待値が高まっている照明分野への展開、パワー半導体ではSiCやGaNといった次世代品の最新動向をお伝えします。日経エレクトロニクスの専門トラック「新市場を創生する要素技術の実像」の詳細は、こちらです。興味のある方は、ぜひご参加ください。フォーラム会場にて、皆さんにお会いできることを楽しみにしております。

 さて、これでJTNの活動は十分なのか。やらなければならないことは、まだいくつもありそうです。企画が固まってきましたら、皆さんにすぐにお伝えいたします。

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