昨日、このコラムで、トヨタ自動車に関する大ニュースが飛び込んできたとお伝えしました。それは、同日の記者会見前に報じられた、朝日新聞電子版の「トヨタ、国内生産300万台割れへ 270万台に減産」というニュースです。

 我々日経ものづくり編集部は、このニュースに大きな衝撃を受けました。というのも、300万台という数字には、同社のものづくりに賭ける思いがぎっしりと詰まっているからです。今回退任が決まった、同社取締役副社長の新美篤志氏は、2011年初秋の日経ものづくりのインタビューに答えて次のように語っています(インタビュー記事の関連URL)。

写真:上野英和

【日経ものづくり 2011年10月号掲載の「私が考えるものづくり」から抜粋 】

 私たちトヨタが造り方改革を実行して競争力を上げるのは、300万台という国内生産を守りたいと考えるからです。もちろん、「海外に出ていくのか」と問われたら「出ていく」と答えます。新興国向けのクルマまでわざわざ日本で造って輸出しようとは思いませんから。そもそも基本は売れる所で造ることですし、グローバル企業としてその地域に貢献したいとも考えています。がしかし、国内の300万台にはこだわっていかないと、私たちの世界で戦うベースが失われてしまう恐れがあるんです。

 考えてみてください。日本には、世界一の精度で削れる工作機械や世界一精密な型、世界一優れたロボット技術がある。世界に誇れる技術を持つさまざまなものづくり企業があるんです。世界を見渡して、これほど高いレベルで技術が集積している国は他にありません。だからこそ日本にいて初めて、私たちのやりたいことができる。優れた部品を生み、高い信頼性のクルマを造れる。この力を残すためには300万台を死守し、サプライヤーさんと共に切磋琢磨していく必要があると考えています。

 昨日の会見後、同社代表取締役社長の豊田章男氏が「300万台を維持していく」と明言したと、高田デスクからの報告を受け、我々日経ものづくり編集部一同、ホッと胸をなでおろしました(Tech-On!関連記事)。