半導体リソグラフィ技術に関する国際学会「SPIE Advanced Lithography」(2013年2月24~28日、米国サンノゼ)に参加しました。リソグラフィは微細化の先行きを決める重要な技術ですが、最近では次世代露光技術の開発に停滞感が出てきています。

 これまでリソグラフィ技術では露光時に使用する光の波長を短くすることで解像力を高め、微細化に対応してきました。ところが、ここ10年ほどは光の波長が193nm(ArFエキシマ・レーザ)のまま変わっていません。光の波長を13.5nmに短くすることで解像力を高めるEUV(extreme ultraviolet)露光技術の実用化が期待されながらも、技術開発が計画通りに進んでいないためです。

 それでも半導体の微細化が着実に前進しているのは、一度形成したパターンのピッチを1/2に縮小するSADP(self-aligned double patterning)や、1/4に縮小するSAQP(self-aligned quadruple patterning)といった成膜/エッチング技術が進化しているためです。最近ではピッチを1/8に縮小するSAOP(self-aligned octuplet patterning)も検討され始めました。

 また、高分子材料の自己組織化現象を利用してパターンのピッチを数分の1に縮小するDSA(directed self-assembly)といった技術も、今回のSPIE Advanced Lithographyで大きな注目を集めました(関連記事)。例えば、東芝はこの技術をコンタクト・ホールの縮小に利用しようとしています(関連記事)。

 このように最近のリソグラフィ技術では、次世代露光技術の遅れを補う材料・加工技術の開発が急速に進んでいます。このため、露光装置メーカーだけではなく、成膜/エッチング装置メーカーや材料メーカーにこれまで以上に活躍の場が広がっています。実際、今回のSPIE Advanced Lithographyでは、そうしたメーカーの技術者が多く参加していました。

 もちろん、露光技術そのものの進化が止まったわけではありません。今回のSPIE Advanced Lithographyでは、オランダASML社が量産向けEUV露光装置の最新状況を報告しました(関連記事)。これまで課題だったEUV光源の開発に一定のメドが付いたことから、EUV露光技術の実用化が現実的になってきたとの見方が出ています。

 私は今回、SPIE Advanced Lithographyの前に半導体回路技術の国際学会「ISSCC」にも参加しましたが、ISSCCに比べてSPIEでは日本人の技術者が多いことに驚きました。もともと、リソグラフィ分野ではニコンやキヤノンなど、日本の露光装置メーカーの存在感が大きいのですが、最近では露光装置に加えて材料・加工技術の重要性が相対的に高まっており、こうした分野で技術的な強みを持つ日本メーカーの存在感が高まっていると感じました。日本の半導体メーカーでは地盤沈下が指摘されているだけに、こうしたメーカーの活躍に期待したいと思います。

 なお、日経BP社では半導体関連情報を提供するオンライン・サービス「日経BP半導体リサーチ(SCR)」を立ち上げ中です。この3月にβ版サイトを立ち上げましたので、ご覧いただけますと幸いです。