Beowulf プロジェクトを手本にPCクラスタに参入

 著者が考えるくらいですから、当然のことながらそれには先駆者がいました(笑)。そのとき知ったのが、PCをネットワークで疎結合してクラスタ化し、スパコンを構築するプロジェクト「Beowulfプロジェクト」です。プロジェクトの概要は明確で、コモディティ製品を組み合わせてスパコンを構築していこう、というプロジェクトでした。

 今でこそ、スパコン業界でもPCクラスタシステムというキーワードが一般的になりましたが、当時は「Beowulf型クラスタ」と呼称する場合もあったほどで、それくらいこのBeowulfというキーワードは重要なものになっていました。

 当時はPCもPentiumプロセッサで、ネットワークは100Mbps、OSは前述のLinuxで、コンパイラも米Free Software FoundationのGCC(GNU C Compiler、のちGNU Compiler Collection)という組み合わせでしでした。筆者がいた会社では、このbeowulf型クラスタにPGIコンパイラを組み合わせることで、高性能なアプリケーションが構築できる環境を構築し、お客様に提供しよう、というプロジェクトに社を挙げて取り組み始めていました。そこで利用したのが、PGIがリリースした「PGI CDK(Cluster development Kit)」と呼ばれる、PCクラスタ向けの統合パッケージです。

 このパッケージは、コンパイラ本体だけでなく、疎結合のクラスタで並列プログラミングを実現するためのメッセージ通信ミドルウエアの実質的標準である「MPI(Message Passing Interface)」と、システムで稼働する計算ジョブを管理するジョブスケジューラ、各種計算ライブラリなどがセットされたものでした。さらには、それらを比較的簡単に設定するための、インストール用のスクリプトまでセットアップされていました。いわば「Beowulf入門セット」と呼べるくらい充実したセット内容となっていたのです。

 このPGI CDKを使って、筆者たちはあるUNIX系のクラスタシステムに勝負を挑んでいくことになります。その具体的な内容は…、次回をご期待ください。