窮地に追い込まれた、日本の半導体産業。東芝のフラッシュメモリやソニーのイメージセンサなど、世界で勝ち組の事業もあるものの、システムLSI事業はどの企業も大変厳しい。

 最近の円安で一息ついているどころではなく、システムLSIの微細化の競争では、米Intel社、韓国Samsung Electronics社、台湾TSMCなどに比べ、日本勢は大きく後れを取っています。こうした苦境の中、パナソニックと富士通は、半導体事業を統合する新会社の設立で合意したという報道もありました。

 半導体メーカーの経営再建については、事業を設計と販売に特化し、製造は海外の企業に委託すると言われています。日本に存在するシステムLSIの工場は、TSMCや米GLOBALFOUNDRIES社といった、海外の大手製造業に売却するとも報道されています。

 それでも、日本に製造業を残す方法を考えろ、知恵を出せ、と私もさまざまな方面から言われています。最先端の半導体の工場を建設するには、数百億円~数千億円単位の投資が必要とされ、世界の半導体産業全体を考えても、工場への巨額な投資に見合うだけの大きな市場を持つ企業は少なくなってきています。

 特に、ウエハーのサイズを現行の300mmから450mmまで大きくした先端プロセスに投資ができるのは、Intel、TSMCなど、ごくわずかのプレーヤーだけになってきています。微細化が進んだ結果、1枚のシリコンのウエハーで製造できるLSIのチップの数が増えました。その結果、大量に製造されるチップを売れるだけの市場を持つ製品が少なくなっているのです。

 このように、日本だけでなく、世界の多くの半導体メーカーでも、最先端の微細加工技術への投資を諦め、微細化以外の方法で付加価値を付けることが必要とされているのです。日本では、最先端の微細加工技術を追求できるのは、フラッシュメモリを製造している東芝だけでしょう。

 それ以外の多くの日本企業が半導体の工場を維持しようとすると、TSMCやGLOBALFOUNDRIESといった、半導体の製造受託を専門とする巨大なファウンドリーに対して、差異化することが必要になります。これらの海外のファウンドリー企業では、大規模な製造装置で大量に製造するわけですから、「規模の経済」でコストは低下します。同じ製品を製造してしまうと、勝機は無い。