今回のGoogle社との和解契約でFTCが提示した係争解決手続きが今後、どのように修正されるか興味深いところである。しかし、FTCの同意命令では、重要な争点となってきた必須特許の適正ライセンス条件(FRAND条件)、特にロイヤルティ算定基礎を含めた適正ロイヤルティ(FRAND料率)の指針については、裁判所あるいは拘束力ある仲裁に委ねられている。この点が解決されない限り、交渉がFRAND約束に基づいて行われてきたか、あるいは、ポテンシャル・ライセンシーにライセンスを受ける意思があったか、などの要件を判断することは難しい。

 それ故、現状のままでは当事者間の紛争が収まるとは考えにくい。Apple社対アンドロイド陣営、Microsoft社対Motorola Mobility社だけではなく、他のICT企業による必須特許訴訟が引き続き起こっているのも、まだこの中心問題が解決されていないことによる、と考えられる。その意味で、現在進行中のFRAND特許訴訟の今後の成り行きに注目したい。特に、Samsung社対Apple社のITC調査(調査番号337-TA-794)では、3月中にFRAND問題についての決定が出される見込みだ。Microsoft社対Motorola Mobility社の米ワシントン州西部地区連邦裁判所での審理(事件番号10-cv-01823)も続いている。

 これらの法廷で必須特許のFRAND条件が判示されることになれば、必須特許で差し止め請求している裁判はすべて収束に向かうこととなろう。