その標準策定の過程で、参加各社は標準技術に関連する特許を取得する。一般に、標準化団体ではIPRポリシー(Intellectual Property Rights Policy;知的財産権取扱い指針)を策定して、各社に標準化の過程で標準に採用される特許(すなわち、必須特許)を適時に開示し、これをFRAND条件でライセンスすることを宣言するように要請する規則を制定している。

 特許には排他的独占権の行使が認められている。他方、メーカーが一旦、標準に準拠した製品を生産し始めてしまうと、そのメーカーは当該標準技術に拘束されてしまう。設計変更をして他の代替技術を使おうとしても、移行費用が高額にならざるを得ないためだ。それだけに、必須特許の所有者がその独占権を振りかざして、競合メーカーに高額のロイヤルティを請求したり、市場への参入を妨害したりする恐れがつきまとう(これは一般に「ホールドアップ問題」と呼ばれている)。その可能性を低減するために、標準化団体のIPRポリシーに基づき参加企業は標準化団体に対して所定の書式を提出することにより、必須特許番号を開示し、これをFRAND条件でライセンスすることを約束している。

 このような状況にあって、Google社が必須特許の侵害を理由にITCの排除措置命令や裁判所の差し止め命令を請求する行為は、メーカーが標準化作業へ参加したり、策定された標準を実施する意欲を減じてしまい、その結果、標準化による互換性からもたらされる消費者にとっての便益は減少し、メーカーが革新的な製品を生み出したり製品差別化を進めようとする意欲は削がれ、新規メーカーの市場参入が妨げられることにつながりかねない。このような懸念から、FTCは自発的に調査に乗り出していた。