NTTドコモがライセンスを開始

 HEVCの特徴は、H.264に比べて動画データの圧縮率を約2倍に高めていることだ。つまり、H.264と同等の画質をほぼ半分の符号化速度で実現できる。例えば、これまで2Mビット/秒の符号化速度で送っていた動画コンテンツを、同じ画質ならば1Mビット/秒程度で配信できるということだ。

ハードウエア・エンコーダの提案も始まった
写真は、NTTが試作したHEVC対応のハードウエア・エンコーダ(符号化器)。FPGAで実現した。

 この特徴は、通信帯域に制限があるモバイル通信を用いた動画配信サービスに向いている。これが、HEVCがモバイル関連業界で関心を集める大きな理由である。スマートフォンの普及を背景に通信帯域の逼迫が課題になっている通信事業者にとっては、通信ネットワークの負荷を軽減できる待望の新技術というわけだ。

 2013年3月には、NTTドコモがHEVC対応の動画復号ソフトウエアのライセンスを開始する。モバイル端末は表示画面のフルHD(1920×1080画素)化が進んでいる。そこに向けたフルHD映像サービスの切り札にしたい考えだ。同社の復号ソフトウエアでは、フルHD映像を再生する際の遅延やコマ落ちを減らす工夫を加えているという。

 HEVCの標準化作業には、携帯電話関連の企業の参加が多い。現在、多くの企業がHEVC対応技術の開発を進めており、2013年に対応技術の提案が相次ぐことは間違いない。