村田製作所が手掛ける自転車型ロボット「ムラタセイサク君」と,一輪車型ロボット「ムラタセイコちゃん」。これらは展示会で,来場者の大きな注目を集める。同社にとっては,蓄電用コンデンサや各種センサ,通信モジュールといった自社部品の性能アピールと同時に,子供の「理系離れ」を食い止める狙いがあるという。
 理系離れ、ゆとり教育が課題として取り上げられることが多い中でも、村田製作所の経営トップを務める村田恒夫社長は「新入社員の学力が低下しているとは思わない」とみている。では、どのように技術者の社内育成に取り組んでいるのか。エレクトロニクス産業の将来像をどう描いているのか。日経エレクトロニクスが村田氏に聞いたインタビューの第2回。

――海外展開について聞きたい。現在,円高などの影響で,機器メーカーを中心として製造拠点を中国などに移設するメーカーが増えている。一方で,技術流出を指摘する声もある。

むらた つねお 1974年3月,同志社大学 経済学部を卒業後,村田製作所に入社。1989年6月に取締役,1991年6月に常務取締役,1995年6月に専務取締役などを経て,2003年6月に取締役副社長,代表取締役に就任。2007年6月から現職。(写真:栗原 克己)

 現在,村田製作所の売り上げの約85%は海外向けが占める。これに対して,モノづくりの約85%は国内だ。数字ありきではないが,海外での生産構成比を,2012年度までに30%に高めていく計画である。

 中国は,電子機器の一大消費地になっている。製造拠点を中国に移設するのは当然の話だ。我々は既に,中国の無錫に工場を持っており,運営は順調だ。ただし,部品製造には大掛かりな設備が必要となるため,中国がダメなら別の地域に移転というわけにはいかない。

 技術流出に関しては心配していない。電子部品の生産には,材料や生産技術などさまざまな技術が必要となるからだ。仮に,ある部分だけを知ったからといって,大きな価値にはならないだろう。