サービスやサポートで稼ぐ

 海外の大手通信機器メーカーがこのような戦略を取れる背景には、事業の軸足をしっかりと定めていることがあるのだろう。通信機器のハードウエアそのものではなく、サービスやサポート、アップグレードなどの事業で利益を上げている。大げさに言えば、ハードウエアは「タダ」みたいな位置付けなのである。こうした割り切りが重要になると考える。

 日本の通信機器メーカーも、ハードウエアだけでなく、サービスなど、より上流の事業領域をしっかりと手掛けていく必要がある。特にワイヤレスではそのような体制
の構築が急務になるだろう。怖いぐらいのパッションがあった

 私が日本に初めて来てから、およそ20年がたつ。半導体メーカーに在籍し、駆け出しのビジネスマンだったころに接した日本の機器メーカーの人たちの印象が今でも強烈に残っている。怖いぐらいのパッション(情熱)があった。「とにかく勝つぞ。なぜ俺たちが負けなくちゃいけないんだ。お前は俺たちが勝つために協力するのか、邪魔するのか」と、すごい剣幕でまくし立てられたものだ。

 あくまでも印象だが、ここ10年ほど、そうしたパッションを日本の機器メーカーから感じにくくなっていた気がする。

 ただし、ここ1~2年は再び日本の大手機器メーカーが変わり始めたように見える。経営者が次々と入れ替わっているからだ。新しい経営者の中には、エネルギーや熱意にあふれている人が多い。彼らに共通するのは、総花的な企業経営と決別し、選択と集中の方向性を明確にしていることである。経営資源が限られる中、「あれもこれもやりたい」と言っていてはどれも中途半端になりかねない。

 「これはやりません」とハッキリ言える最近の国内大手機器メーカーの経営者には期待が持てると思う。(談、聞き手は日経エレクトロニクス)