TDKでは、海外売上高比率や海外生産比率がかなり高い。これは、我々の電子部品が海外の機器メーカーに大量に採用されていることを示す。結果として、海外メーカーの競争力向上に寄与している側面はあると思う。こうした状況を一人の日本人技術者として見ると、率直に言って、じくじたるものがある。できることなら、日本の機器メーカーにまずは採用してほしいと思っている。

かつては国内に十分な市場

まつおか かおる 1953年生まれ。大手電機メーカーを経て2009年1月、TDKに入社。2010年6月、執行役員に就任した。情報記憶装置のメカニズム、アクチュエータ、トライボロジーの研究開発と、技術戦略立案・技術マネジメント構築に従事。現在は、技術本部 コーポレートR&Dグループゼネラルマネージャーなどを兼務。(写真:新関 雅士)

 日本のエレクトロニクス・メーカーにとっては、かつて国内に十分大きな市場があった。例えば、日本の世帯数を4000万、製品の寿命を10年と仮定すると、国内には黙っていても1年間で400万世帯分、すなわち400万台の市場が存在した。このうち、何%のシェアを取るかがポイントだった。30%のシェアを取りたければ120万台造ればいい。この台数を、商戦が始まる前に造ってしまう。これで売り切れたら、翌年まで造らない、という具合だった。

 しかし、今後は少子化の影響で国内人口が減っていくわけで、今までのように日本市場ありきではなくて、グローバルに事業を展開しなければならなくなる。従来の「単眼」ではない、「複眼」的な視点が必要だ。その中で、日本向けは「このような仕様に落とし込みましょう」という考え方が求められる。ここで複眼的視点とは、いわゆる高付加価値商品と、コスト勝負のコモディティー商品の両面を同時進行的に手掛けるといったことである。