2回目の失望

 ソニーがAndroidをベースにした「Google TV」の開発に飛び付いたのには、非常にがっかりした。同社がかつてロボット事業から撤退したことに続く、2回目の失望だった。ソニーは、以前はすごい会社だった。「業界のモルモット」などと呼ばれ、ソニー製品が成功すれば他社が参入するという雰囲気さえあった。

 ところが、Google TV対応製品ならSamsung社でも作れる。メーカーごとに付加価値を加えるのが難しいので、いずれは価格競争に陥り、おいしいところはGoogle社に持っていかれることになる。Google TVを作るぐらいなら、「プレイステーション・テレビ」を作るべきだ。

新陳代謝が強い会社つくる

 これは、ソニーに限った問題ではない。日本の電機メーカーを取り巻くビジネス環境や仕組みが変わらないと、この先も苦戦が続くだろう。新しいことに挑戦するのだったら、汎用製品事業などを手掛けている場合ではない。会社を分割するぐらいの荒療治が必要だ。米国では、時代とともに主役が交代している。Microsoft社の時代は終わりを迎え、次はGoogle社、Apple社、Facebook社と主役が移り変わっている。

 こうした変遷が、強い国/会社を育てる。Google社を辞めた人が新しい会社をつくって大きく育てるといった新陳代謝が起こるのは健全な姿だ。

 日本メーカーがデジタル家電分野で勝てるとしたら、汎用と専用の中間の領域だろう。例えば、タブレット端末は汎用製品では世界で勝てないが、病院や学校などの特定分野に向けて、ハードウエアにソフトウエアやサービスを組み込んで提供すれば勝機があるかもしれない。まずはブロードバンド環境が整備された日本市場でビジネスを立ち上げ、それをアジアなど世界に展開する。端末ではなく、サービスでもうけるという戦略の方が、私にはピンとくる。(談、聞き手は日経エレクトロニクス)