サンフランシスコ湾周辺の地図
北にサンフランシスコ市、南にサンノゼ市がある(提供:Googleマップ)
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MoneyTreeによる2012年第4四半期のシリコンバレーにおけるSeries A投資の分析結果
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 筆者は、子供の頃からシリコンバレーのサンノゼ市周辺で育った。その頃の通勤ラッシュは、住宅地が多いサンフランシスコ市の南から金融機関が集まるサンフランシスコ市中央部へとつながっていた。ところが、この数年間で交通の流れが変わった気がする。つまり、交通の流れはサンフランシスコ市中央部から南の町へというように方向が逆に変わったのだ。今の若者は、刺激が少ない住宅地に住むより、サンフランシスコ市の都会生活を望んでいるからだと、私は想像している。だが、米Google社や米Facebook社などの会社は、サンフランシスコ市から南に少し離れた町にあるので、仕方なく南方向に通勤しているわけだ。

 この流れは、この先でまた変わるかもしれない。2013年2月26日のシリコンバレーのイベントで、米国のベンチャー投資市場調査「MoneyTree」(Webサイト)に関わっている米PriceWaterhouseCoopers社、DirectorのSteve Bengstrom氏によると、2012年第4四半期はシリコンバレーのSeries A注1)投資の中に、サンフランシスコ市に本社を置いているベンチャー企業へのものが46件であり、最も多かったという。その次は、Stanford大学があるパロアルト市の14件であった。「サンフランシスコ市は、もうシリコンバレーの中心地となりました」(Bengstrom氏)というほどだ。

注1)ベンチャーキャピタルなどがベンチャー企業に対して出資する段階のひとつ。Series Aは、起業したばかりのスタートアップ企業に対してなされる投資を指す。製品の企画・開発や、技術開発などに対してSeries Aの投資がされる。

 この数字の裏付けは、同じく2012年第4四半期にSeries Aのベンチャー投資を分野で分けてみるとわかる。ソフトウエア企業への投資が75件と、ダントツに多いのだ(その次はバイオ技術関連で4件)。クラウド・コンピューティングやWeb開発環境の進化により、今ではソフトウエア関連のベンチャー企業を設立するために要する人員は、数人程度である。サンフランシスコ市に住んでいる多数のソフトウエア開発者やビジネスマンには、自分の家や共有するオフィス設備などを利用して、ソフトウエア企業を比較的に簡単に設立ができるわけだ。わざわざ南部の町にオフィスを借りて、通勤する必要もない。米Fitbit社みたいな消費者向けのハードウエアを手がけているベンチャー企業でさえも、製造よりもソフトウエアやデザインを重視しているので、サンフランシスコ市に本社を置いている。

 米Twitter社や米Zynga社といったソフトウエア関連のベンチャー企業は、成功して規模を拡大しても、サンフランシスコ市に本社を残す動きがある。本社がシリコンバレーの町にあっても、サンフランシスコ市内に別途オフィスを構えている企業も多い。Google社などもそうだ。Microsoft社も最近、サンフランシスコ市にオフィスを開いた。都会の魅力と企業の仮想化の流れが続くと、サンフランシスコ市はシリコンバレーの中心地になるかもしれない。