プレス:スプリングバックを予測

 薄板のプレス加工を対象としたプレスの成形シミュレーションでは、製品形状や金型形状を基に、成形時に割れやしわが発生しないかどうかを検証する(一覧表[2])。さらに、加工後の戻り(スプリングバック)の量を予測したり、その分を織り込んだ金型形状を作成したりすることも可能だ(図3)。

図3●薄板プレス加工のシミュレーション
図3●薄板プレス加工のシミュレーション
「JSTAMP(JSOL)」による。スプリングバック量を計算し(左)、これを見込んだ金型形状を作成することで、スプリングバックを抑える(右)。
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自動車ボディ部品のプレス加工シミュレーション
(JSTAMPによる。動画:宮津製作所)

 スプリングバック量の予測は、プレス加工シミュレーションで特に役立つといわれる。割れやしわは製品や金型形状によるところが大きいが、スプリングバックは形状に比べて材料の関与する度合いが大きい。1カ所のスプリングバックを防止しようとすると、別の場所のスプリングバックが悪化するという、「収束しない」問題が発生することもある。「図面を見ただけで割れやしわの発生を予言できるベテランの加工担当者でも、スプリングバックを定量的に把握するのは難しい」(JSOL)。さらに、新しい材料を加工するとなると、そのスプリングバック量の見当をシミュレーションなしで付けるのは非常に困難になる。

 新しい材料の利用に加えて、工法を変える場合もシミュレーションの重要性が増す。例えば、加工時のプレス機の動きを微妙に制御できるサーボプレスや、加熱しておいてプレスするホットプレスの普及が進んでいる。「JSTAMP」(JSOL)では、「金型とワークの温度と熱の出入りを計算できる機能を加え、ホットプレスのシミュレーションが可能なようにした」(同社)という。

 シミュレーションの際には、ビードなどを含む金型形状を用いるが、製品形状だけでもシミュレーションが可能。製品形状のみである程度見当を付けた上で、金型を設計し、さらに金型を検証する、という使い方ができる。

一覧表●加工シミュレーション・ツールの例(プレス)
製品名 開発会社 概要 連絡先
プレス
ASU/H-form 先端力学シミュレーション研究所 ASU/P-formベースのハイドロフォーミング用ツール。 先端力学シミュレーション研究所
ASU/P-form 先端力学シミュレーション研究所 成形前後の板厚の変化の計算、スプリングバックの予測が可能。ソリッド要素による絞り加工、しごき加工の計算機能がある。並列スレッドに対応。 先端力学シミュレーション研究所
AutoForm スイスAutoForm Engineering社 通常の薄板プレスの他、熱間プレス、焼き入れ、ハイドロフォーミングのシミュレーションの計算が可能。スプリングバック量を見込んだ金型形状の計算、工程のばらつきによるロバスト性の計算もできる。3D-CAD(CATIA V5、NX)と連動するツールがある。3Dモデルからブランク材の形状を計算するツールは無料。 オートフォームジャパン
COPRA 独data M Sheet Metal Solutions社 ロールフォーミング加工について、製品設計、シミュレーション、部品データベース管理、測定までをカバーする。測定用に専用の装置がある。 アプライドデザイン
JSTAMP JSOL われ、しわの予測に加え、ブランク形状やトリムライン形状の予測、スプリングバック量を見込んだ金型形状の計算といった一連の機能を持つ。スプリングバック計算は移動硬化やヤング率のひずみを考慮。内部のソルバーは「LS-DYNA」「JOH/NIKE」「HYSTAMP」を使用。 JSOL
PAM-STAMP 仏ESI Group社 部品形状のみでの計算と、金型形状を用いる計算が可能。スプリングバック計算は移動硬化やヤング率のひずみを考慮。スプリングバック量を見込んだ金型形状を求める機能がある。 日本イーエスアイ
PAM-TFA for CATIA V5 仏ESI Group社 CATIA V5上で簡易成形シミュレーションを実行する 日本イーエスアイ
Stampack スペインQuantech ATZ社 薄板プレスに加えて厚板のプレス(板鍛造)のシミュレーションが可能。板鍛造ではソリッド要素を用いる。 アプライドデザイン