1週間にわたる春節(旧正月)休暇が明けた。上海でもこの記事が公開される前週から、ようやく社会が始動し始めた。

 中国で春節明けのこの時期は転職シーズンだ。中国の企業は通常、「紅包」(ホンパオ)と呼ばれるボーナスを、春節休暇の直前、すなわち例年1月か2月に支給する。ボーナスをしっかり確保し、10日前後の長い春節休暇を満喫した上で、転職活動を始める、というパターンが多い。

 EMS(電子機器受託生産)/ODM(Original Design Manufacturer)業界でも、春節明けには例年、人手の確保に苦労するということについては、このコラムでも何度か触れてきた。通常、会社の寮に住み込みで働いているワーカーたちが春節休暇で帰省し、そのまま戻らず別の工場に移るというケースが多いからだ。

 2013年も中国や台湾のメディアが春節明け早々に報じたEMS/ODM関連のニュースは人集めの記事だった。EMS世界最大手の台湾Hon Hai Precision Industry社〔鴻海精密工業、通称:Foxconn(フォックスコン)〕が、中国内陸の直轄市、重慶市に置く生産拠点で、春節明けの人材採用を開始したという話である。

 中国紙『重慶時報』(2013年2月17日付)がフォックスコン重慶工場の採用担当者の話として伝えたところによると、同工場では熟練工とライン従業員合わせて4万人もの人手が不足している。募集している人材も機械オペレーター、メンテナンス担当、精密アセンブリ担当、製品テスト工、旋盤工、仕上げ工、プレス工、成形工と幅広い。

 とにかく人手が足りないため未経験者も大歓迎で、実習期間にはマンツーマンで指導。実習期間の給料も、2012年の1350元(1元=約15円)から今年は1650元に引き上げた。ただ、風紀を重んじる同社では、いかに人手不足の状態にあっても、ピアスやタトゥーのある者については一律で不採用。また業務の必要上から男子は身長160cm未満、女子は150cm未満は採用されない――など、同社の採用の様子を詳しく伝えていた。

 それにしても、1つの工場で4万人も不足とは。中国全土の従業員が120万人とも130万人とも言われる同社ならではのスケール感のある話で、景気も悪くないのだろうと思わせる記事だった。