これに対して、ASHRAE 34-2010やISO/FDIS 817:2012では、燃焼範囲だけではなく、燃焼熱(HOC)や燃焼速度(BV)といった指標も含めることで、燃え方の激しさも加味した燃焼性の分類になっている。例えば、燃えるけどそんなに激しくは燃えないものは弱燃(クラス2)、それよりもさらに燃えにくいものは微燃(クラス2L)といった分類になっている。燃焼性が最も高い強燃(クラス3)に分類されるのは、例えばISO/FDIS 817:2012の場合は、LFLが3.5体積%以下またはHOCが1万9000kJ/kg以上。GHSにおける極めて可燃性の高いガスの燃焼範囲と比べると、LFLは9.5体積%も低く設定されている。

 日本フルオロカーボン協会は、HFC-32のように燃えるけど燃えにくいものが極めて可燃性の高いガスとなるGHSの分類はおかしいのではないかという見解。同協会は、GHSの分類方法を変更してもらえるよう働きかけることを現在検討中という。

 では、いったいHFC-32は安全なのかそうでないのか--。この点について、ダイキンは次のように説明する。「経済産業省の『リスクアセスメント・ハンドブック』に基づいて当社で実験を行った結果、引火事故の発生確率は100億分の1以下であり、安全性は確保できている」(同社広報部)と。

 なお、HFC-32は「高温の熱源や裸火などに接触すると、熱分解して毒性ガスが出る」という指摘もある。実は、これまでも使われてきたフッ素系の冷媒はR-410Aも含めて、いずれも同様の問題があり、高温の熱源や裸火などに接触させないようにするなど運用面でカバーしてきた。熱分解しても毒性ガスが出ない冷媒が理想だが、現状のR-410Aをまずは代替していくという段階では、HFC-32の省エネ性の高さと地球温暖化影響の低さは捨てがたいといえよう。

■変更履歴
記事掲載当初、R-410AをR-140Aと表記していた部分がございました。正しくは,R-410Aです。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2013/02/28 10:50]