地球温暖化への影響を70%以上削減

 こうした省エネ性の高さに加え、HFC-32の利点とされるのが、地球温暖化への影響を小さくできることだ。

 HFC-32は、積分期間が100年の地球温暖化係数(GWP)が675。GWPが2090のR-410Aと比べて約1/3と低い。その上、単位質量当たりの冷媒で運べる熱量(冷凍効果)がR-410Aよりも大きく、「冷媒の使用量(質量)を10~30%(機種の冷暖房能力による)減らせる」(ダイキン工業広報部)という。すなわち、HFC-32をエアコンの冷媒に採用した場合、冷媒そのものの地球温暖化係数を下げられるという効果と、冷媒の使用量を減らせるという効果が相まって、地球温暖化影響をR-410Aに対して70%以上削減できるのだ。

 確かに、地球温暖化係数の低さでは、二酸化炭素(地球温暖化係数は1)やプロパン(同3)といった自然冷媒にかなわない。ただ、二酸化炭素は空調用途でのエネルギ効率が低く(給湯用途では従来冷媒とエネルギ効率は同等)、現状の技術ではエアコンのサイズ増を避けにくい上、エアコン運転時の電力消費も含めた温暖化防止という点でも課題がある。プロパンについては、強燃性の物質であることから、火災などに対する安全性確保のための技術が不可欠であり、その確立が課題になっている。

 ダイキンは、冷媒による直接的な温暖化影響だけでなく、エアコン運転時の電力消費も含めた温暖化影響やコストや安全性などについて、現状の技術レベルを念頭に検討した。その結果、R-410Aに次ぐルームエアコン用の新冷媒としてはHFC-32が最良と判断したという。もちろん、今後もより優れた冷媒の追求は続けていくとしている。