3D-CADの利用段階(3D設計がどれくらい浸透しているか)のデータも示されているので、合わせて紹介しよう(図2)。「3D(ソリッド)メインで安定段階」に達している企業の割合は、日本は17%(2004年時点)、中国が20%(2004年時点)であるのに対し、韓国は46%(2008年時点)に達している。調査年度が違うので一概に比較することはできないが、3D設計の利用段階については、韓国が大幅にリードしている可能性が高い。

図2●CADの利用段階
図2●CADの利用段階
資料:竹田陽子, 青島矢一, 延岡健太郎, 林采成,元時太「設計3次元化が製品開発プロセスと成果に及ぼす影響に関する日本・中国・韓国の比較調査」, 『技術マネジメント研究』, Vol.8, 2009 (p.55図2).
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 一方、「手描き」「2D-CADがメインで安定」「2次元から3次元(ワイヤフレーム/サーフェス/ソリッド)への移行段階」の合計で見ると、日本は76%(2004年時点)、中国も77%(2004年時点)であるのに対し、韓国は40%(2008年時点)となっている。日本や中国では、まだ3/4以上が2D設計主体か、3D設計への移行段階にある。しかし、韓国はこの時点で約4割の水準にあり、早々に本格的な3D設計への移行が進展したと見ることができる。

 このように、日本の製造業は3D-CADの導入では先行したが、本格的な3D設計への移行については、新興国企業と比較して遅れているのが現実だ。筆者はコンサルタントの立場で多くの企業の開発プロセスの状況を把握する機会があったが、ほとんどの企業はすでに3D-CADを導入していると認識している。しかし、3D設計への変革スピードは速いとはいえない。3D設計が浸透し、製造工程や販売工程で3Dデータがフル活用され、最大限の効果を出すことができている企業は、現在でも一部に過ぎないのではないだろうか。