2013年1月24日にトヨタ自動車とドイツBMW社が開催した共同記者会見の様子。左から2人目が、トヨタ自動車 代表取締役副会長の内山田竹志氏。(写真:トヨタ自動車)
2013年1月24日にトヨタ自動車とドイツBMW社が開催した共同記者会見の様子。左から2人目が、トヨタ自動車 代表取締役副会長の内山田竹志氏。(写真:トヨタ自動車)
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 2012年11月の電池討論会では、全固体電池に関する発表も多数あったのですが、発表冒頭に先述のような導入コメントをされる方が目立ちました。多くの電池研究者が強い関心を示した「有機電解液並みのLiイオン伝導度を備える物質」とは、東京工業大学 大学院 総合理工学研究科 物質電子化学専攻 教授の菅野了次氏を中心とする研究グループが見出した、硫化物系固体電解質の一種であるLi10GeP2S12のこと( Tech-On! 関連記事)。固体電解質のLiの拡散速度を表すLiイオン伝導度は、室温(27℃)で1.2×10 -2 S/cmと極めて高いのです。

「資源」と「安全」にも高い関心


 このように、さらなる高容量化を目指したLi空気電池や全固体電池の取り組みが盛んになっている一方で、最近になってポストLiイオン2次電池として高容量化以外の開発軸にも注目が集まり始めています。それが、「資源」と「安全」です。

 資源の観点で有望なのが、レアメタルであるLiを用いないNaイオン2次電池です。資源的に豊富なNaを用いることが大きな特徴。Naイオン2次電池の研究開発で業界をリードする東京理科大学 理学部 応用化学科 准教授の駒場慎一氏は「コストを大幅に低減できる潜在能力を秘めている」と自信をのぞかせます。最近では、正極材料や負極材料、電解液の候補などが続々と発見され、現在では常温でLiイオン2次電池と遜色のない容量を実現できる実力を備えてきています( Tech-On! 関連記事)。

Boeing787の電池事故


 安全面はLiイオン2次電池の開発で常に議論されてきた課題ですが、米Boeing社の中型旅客機「Boeing787」で電池事故が相次いだことからさらに関心が高まっています( Tech-On! 関連記事)。

 最近では、国土交通省航空局が航空機用Liイオン2次電池を旅客機で輸送する際の取り扱いを、35kgから一般用と同じ5kgまでに変更しました。これは、国際民間航空機関(ICAO)がBoeing787で起きた電池事故を受けてガイドラインを改正したことに伴う措置ですが、安全に対するハードルは確実に高くなっています。電池事故の原因究明にはまだ時間が掛かりそうですが、いずれにしても電池の安全対策技術は今後さらに強く求められるものになることは間違いありません。

 例えば、首都大学東京大学院 都市環境科学研究科 分子応用化学域 教授の金村聖志氏は、Li金属電池が充放電を繰り返す際に生じるデンドライト状のリチウム金属を抑制する技術を開発。それが、リチウムを粒状に均一に析出させる3次元規則配列多孔構造を有するセパレータ「3DOMセパレータ」で、安全かつ500Wh/kgの高エネルギー密度を達成可能なLi金属電池の実用化を目指しています。金村氏には、2月28日のセミナーで、トップ・バッターとしてご講演いただきます。