5. 低価格戦略で中国市場へ

 現在、中国で家庭向け血糖値測定器の市場をリードしているのは、外国企業では米Johnson&Johnson社とスイスROCHE Holding社の2社のシェアは合計60~70%に達する。中国企業では、三諾生物傳感有限公司(Changsha Sinocare)と北京怡成生物電子技術有限公司(Biostrips)がしのぎを削っている。ハイエンド製品を販売する外国企業は、オムロン、Johnson&Johnson社、ROCHE社、ドイツBayer社、米Abbott Laboratories社、ドイツB.BRAUN Melsungen社などである。いずれも高品質をうたっている。

 これらの企業の血糖値測定器1台当たりの売価は約350~1200人民元、血糖値の試験紙(テスト・ストリップ)の売価は1枚当たり約3~10人民元である。他方、中国系主要メーカーの三諾生物傳感有限公司(Changsha Sinocare)と北京怡成生物電子技術有限公司(Biostrips)の場合、血糖値測定器1台当たりの売価は約450~650人民元、血糖値の試験紙(テスト・ストリップ)の売価は1枚当たり約2.5~7人民元である。ローエンド製品の市場では、天津億朋醫療器械有限公司(Tianjin Empecs Medical Device)が頭一つ出た形で健闘している。同社の血糖値測定器1台当たりの売価は約150~300人民元、血糖値試験紙(テスト・ストリップ)の売価は1枚当たり約2.5~3.5人民元である。

 外国の有名メーカーは短期的に市場の優位性を保てるだろうが、長期的には中国メーカーが追い上げてくることが予想される。外国メーカーの成長率は次第に鈍化し、中国メーカーにシェアを奪われる可能性もある。

 急成長を遂げ、価格競争が白熱化する中国の血糖値測定器市場において、優れたデザイン力、血糖値測定器の製造力、外国企業からの受託生産の経験を持つ優位性のある企業こそ市場の勝ち組になる。そして、中国の消費者のニーズや使用上の習慣をとらえた製品を新たに開発し、高品質・低価格の製品を提供して、測定の速さと正確さを売りに、シンプルな機能と使いやすいインタフェースを全面的にアピールする。健康管理ソフトの導入や、痛み緩和機能付きの血糖値測定器など、機能の充実も図る。さらにコストダウンを進めて、既存メーカーの製品に対抗することが必要である。ひいては、ブランドの知名度や販路構築などの経験を生かして、プライベート・ブランドを立ち上げたり、現地の優良メーカーと業務提携したりしてOEM/ODM業務を行うことも考えられる。

 消費者の血糖値測定器の購入価格帯は、成都市の場合、300~499人民元に集中している。続いて500~799人民元、100~199人民元となっている。800人民元以上の高価格帯の比率は非常に少ない。このように、市場に流通している製品の売価と購入価格帯から見て、成都市で売れる血糖値測定器の価格は150~600人民元といったところだろう。ただ血糖値測定器の購入者には血糖値試験紙(テスト・ストリップ)を無償で提供するなど、付加価値を高めた販売戦略を強化することも忘れてはならない。