意外に新しい日本のPM2.5基準

 ちなみに、半導体の開発や製造に用いるクリーンルームは、PM2.5よりもさらに小さいサイズの粒子を減らすことが主眼になっている。例えば、1m3当たりの空気に存在する0.1μm以上の粒子が10個よりも小さい水準に保たれている。

 PM2.5は粒径が小さいため、呼吸とともに肺などの呼吸器の奥に入り込みやすい。それが健康被害を引き起こす可能性を指摘される理由だ。米国ではPM10の基準を満たしている地域でも健康への悪影響が見られることから、1997年にPM2.5の環境基準を設けた。PM10の規制値を厳しくするだけでは、より粒径の小さな粒子には対応できないと判断したからだ。

 日本で定められたPM2.5の環境基準は、意外に新しい。基準の設定は、2009年のことである。「1年平均値が15μg/m3以下であり、かつ1日平均値が35μg/m3以下であること」と定めている。2006年に改定した米国基準と同等の規制値だ。ただ、基準策定前の2000年から国や自治体によるPM2.5の測定は始まっており、ほぼ基準値を下回る減少傾向にあった。

 こうした背景の中でにわかに関心を集めたのが、「中国からPM2.5が風に乗ってやってくる」という話題だ。中国国内でのPM2.5の発生源は、主にトラックなどのディーゼル車の排気ガスや、石炭を用いた暖房システムからの排煙、汚染物質を多く含んだ軽油の利用などが取り沙汰されている。

 実は、PM2.5を含む粒子状物質は、エンジンなどの排気中に最初から含まれる粒子だけが発生源ではない。排気された時にはNOxやSOxなどの気体だが、大気中での光化学反応などで粒子化する2次生成粒子がある。2次生成粒子は大気中の粒子状物質の6割程度を占めるとの観測結果があるものの、その発生メカニズムについては未解明の部分も多い。これが、発生源の特定や解決に向けた対策を難しくしている側面がある。