粒径は「2.5μm以下」とは限らない

 PMは、主に物質の粒径でいくつかの種類に分類される。その一つが「PM2.5」である。名称に含まれる「2.5」は2.5μmのこと。PM2.5は、おおむね2.5μm以下の粒径の微粒子を指す。日本の呼び名では「微小粒子状物質」と表現することが多い。

 ただし、すべての粒子の粒径が2.5μm以下かと言えば、そうではない。粒子状物質の規制で使う「粒径」は、物理的にものさしで測定した数値ではないからだ。粒径は、統計的な分布の中で定められる。一般に粒子状物質の大きさや形状は不規則であるため、空気の流れの中での大きさを表す「空気動力学径」と呼ぶ単位を用いる。測定の際に粒子を捕集する効率を基に粒径が定義され、分類名がつく。

 例えば、日本の大気汚染基準で使われる「SPM(Suspended Particle Matter)」は「浮遊粒子状物質」と呼ばれ、粒径が10μm以下のもののことを指す。この場合、粒径が10μmを超える粒子を100%カットしたものをSPMと定義付けている。

 「粒径10μm以下」という微粒子の定義は他にもある。「PM10」と呼ばれるものだ。これは、測定の際に粒径が10μm以下の粒子を捕集する効率が50%となる粒子と定義されている。つまり、統計的な粒径の分布としては、PM10にはSPMよりも大きい10μmを超える粒径の粒子が含まれる。PM2.5の定義は、このPM10と考え方が同じだ。粒径2.5μmの微粒子を捕集する効率が50%となるものをPM2.5と呼ぶ。

 2.5μmという粒径は、どの程度か。よく比較されているのは、人間の髪の毛やスギ花粉だ。スギ花粉は30μm前後、髪の毛の直径は70μmほど。これらに比べるとPM2.5は、1/20~1/10程度のサイズである。たばこの煙の粒子はサイズの単位がPM2.5よりもひと桁下がって数百nm程度。ウィルスは数十~数百nm程度の大きさだ。