Globalstar社の存在衛星通信サービスを採用する「Spot」端末
(写真:Dion Hinchcliffe、Creative Commons Attribution-ShareAlike 2.0 Generic)
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 無線LANが利用している2.4GHzなどのISM周波数帯は、以前から「ゴミ帯」というニックネームで呼ばれている。比較的自由に利用できるISM周波数帯は、電波の干渉から保護されていないという理由からである。干渉の問題があっても、無線LANは大きな成功を成し遂げ、普及してきた。米衛星通信事業者Globalstar社はISM帯と、同社が保有している帯域を組み合わせて、通信事業者の無線電話通信とほぼ同じ信頼性を持つと主張する無線データ通信サービスを提案している。

 Globalstar社の衛星電話などの端末は、ISM帯(2473M~2483.5MHz)の隣である2483.5M~2495MHzを使う。衛星端末は一般に、無線電話通信事業者の電波が届かない田舎で利用されている。裏を返せば、衛星端末をほとんど利用していない市街地では、この帯域を無駄にしている。こんなことに気付いて、Globalstar社は2012年11月、無線LANの「チャンネル14」(2484MHzから始まる)を採用するサービスを米連邦通信委員会(FCC)に申請した(発表資料)。

 Globalstar社は、無線LANも使っているこの帯域の利用者は少ないと主張し、通信事業者並みの信頼性がある無線データ通信サービスを提供ができると謳う。無線端末側で、無線LANチップセットのファームウェアを更新するとこのサービスが利用できる。またアクセスポイントに、電波の干渉を避けるためのフィルタを導入する必要がある。

 Globalstar社の提案は面白いが、いくつかの壁もある。まず、新しいサービスのネットワーク構築に、パートナー企業を見つけることが不可欠である。さらに、FCCがこの新しいサービスに許可を下すことも必要である。米TVTechnology誌によると、業界団体Wi-Fi AllianceやBluetooth Special Interest Group(Bluetooth SIG)、Wireless Internet Service Providers Association(WISPA)、米Iridium社などがFCCにGlobalstar社の提案に反対する意見を登録している(該当記事)。Globalstar社が提案している新サービスが他の無線サービスと干渉を起こす恐れが多いらしい。Globalstar社によると、こうした反対意見によってFCCが許可しないことはないと見込んでいる。しかし2012年2月には、米LightSquared社が衛星サービスに割り与えた周波数帯でLTEサービスを提供する提案をFCCに提出したが、GPSに干渉を起こす恐れがあるということで許可が下りなかったという事例もある。

 スマホなどの無線データ通信端末の普及で、無線ネットワークに負荷が増えている。Globalstar社の提案が通るかどうかはさておき、こうした周波数帯を無線データ通信サービスで利用しようとする提案が今後も続くだろう。