空気からは採取できない

 ヘリウムの生産は、比較的高い比率で含む天然ガスから採取することで行う。天然ガス田は数多くあるが、供給元は大きく増えない傾向にある。ヘリウムを採算に合うコストで取り出せるガス田が限られているためだ。最近採掘が進んでいるシェール・ガス田からはヘリウムを採取できていない。また、これまで市場へ潤沢に放出されてきた在庫が底をつき始めている。主な生産国である米国は、1960年代に軍用の戦略物資として大量に備蓄、その後に方針を転換し1990年代からは民間へ継続的に放出したが、この放出が2015年に終わる。

 代替が難しいために安定的な需要があり、新興国での需要が増えている一方、供給が限られる状態が続いたことで特に2000年代後半から、構造的に需給が引き締まった状況に陥っている。こうした中、2012年11~12月に極めて深刻なヘリウム不足に陥ったのは、主力生産工場での定期修理が長引いたことによる。この時期までにシェール・ガスの採掘が増えたことなどで天然ガス需要が低迷したことも影響した。直近の平均輸入価格は、2000年代前半までの需給が比較的安定していた時期と比べて2倍になった。

日本におけるヘリウム輸入単価の推移
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 ただし2013年後半には、少なくとも日本では深刻なヘリウム不足は解消へ向かう見込みである。調達先を米国以外に広げる動きが出てきたためである。例えば岩谷産業は2013年から20年間にわたり年間800万m3のヘリウムを輸入する権益を獲得した。年間800m3は2010年の輸入量(国内消費量に相当)の60%に当たる。