「人間の不完全さを補完するためのシステム」とは

 「速度違反をしてはいけない」という倫理的な理性と、「気持ちよく走りたい」「とにかく早く目的地に到着したい」と考えるスピード命の本能が、頭の中で交互にささやきあう葛藤がドライバー心理。コメント投稿欄にある「『結局、人間のような不完全なモノにクルマの運転をさせてはいけない』という所に行き着くような気がしてきました。でも、私は電車に乗るよりはクルマを運転する方が好きですね(帰りに一杯やれなくても)。人間も規制も不完全で良いんじゃないですか? だんだん良くなれば」という気持ちが読者の本音の部分かもしれません。

 今回の記事ランキングには、まだ登場していませんが、2月12日付の同コラムは同じく『日経Automotive Technology』の清水直茂記者による自動運転の話題(同記者のEditor's Note「来たれ自動運転車」)。まさに、「人間の不完全さを補完するためのシステム」がテーマです。

 清水記者は、「日本こそ自動運転技術の開発に最も熱心であるべき」と提言しています。「自動運転技術の開発は米国を中心に盛り上がっていて、公道実験も始まっている。それなのに日本は...」というわけです。おそらくこの自動運転技術も、ETCによる速度違反の取り締まりとよく似た「規制」と「嗜好」の社会的な議論が繰り広げられるだろうことは想像に難くありません。同記者が「(自動運転の)実現には技術面だけではなく制度面などの多くの課題を解決していかねばなりません」と述べている通りです。

 少し違う分野に目を転じれば、だいぶ前にテレビのデジタル放送の録画システム「ダビング10」で話題になった著作権管理技術の議論にも近い。技術の進化でかなりのことが実現可能になったけれど、利用者の心をとらえるかどうか、本当に便利かどうかは別の観点で議論しなければならないということなのでしょう。

 それにしても、速度違反取り締まりについての投稿を読むと、Tech-On!読者の「クルマ・愛」を感じざるを得ません。自動車という乗り物は、本当に「感性の商品」だと再認識しました。各社が発表した2013年10~12月期の決算を見ると、自動車メーカーの力強さが戻ってきつつあるようです。トヨタ自動車は業績の見通しを上方修正、ホンダは売上高と営業利益の見通しを据え置いたものの、同四半期の営業利益は前年同期比242.4%増になりました。(トヨタの決算記事はこちら、ホンダの決算記事はこちら

 主因は円安効果や、北米市場の販売増など。ホンダは、2013年の販売台数計画をリーマンショック前を超える水準に設定しました。予断を許しませんが、「日本の『クルマ』は、まだまだ健在」といったところでしょうか。